2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月29日

 2024年4月28日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、Demetri Sevastopulo 同紙米中特派員によるインタビュー記事で、退任間際のアキリーノ米インド太平洋軍司令官が、南シナ海で徐々に圧力を強める中国の戦略を「茹でガエル」戦術だと述べたことを紹介している。

(Anton Petrus/gettyimages)

 来週パパロ海軍大将にその指揮権を委譲するアキリーノ米インド太平洋軍司令官は、「中国はますます攻撃的になり、大胆になり、危険度を増大させている」と語った。同司令官は、在職中の3年間に、中国が軍事力増強を速め、行動は次第に攻撃性を増し、地域を益々不安定化させたと述べた。

 司令官は、中国のやり方を「茹でガエル」戦術と呼んだ。それは、静かに温度を上昇させることで敵に危険を過小評価させ、真に危機的事態に達したときには既に手遅れになっているようにする戦術である。中国はこの戦術を追求し、益々危険な軍事行動で地域の緊張を高めていると司令官は非難した。 

 アキリーノ司令官は、22年8月、当時のペロシ米下院議長の台湾訪問に際して中国が前例のない軍事演習を行ったときも、昨年中国のスパイ気球が米国上空を飛んだ折も指揮を執っていた。最も神経をすり減らした出来事は、ペロシ議長の台湾訪問の時で、その理由を、中国が同訪問を米国の政策のエスカレーションと誤解したためだと説明した。

 中国の軍用機は、以前は両国間の緩衝地帯とされていた台湾海峡の中間線を、現在は日常的に飛び越えている。最近では、中国の沿岸警備隊も台湾の金門島と馬祖島周辺で攻撃的姿勢を見せている。

 アキリーノ司令官によれば、中国の威圧戦術の最たる例は、フィリピンの排他的経済水域内にあるサンゴ礁、セカンド・トーマス礁周辺だという。同司令官は、「セカンド・トーマス礁について非常に懸念している。フィリピンの沿岸警備隊員と軍人が負傷している。これは更に一歩踏み込んだ威圧戦術だ」と述べた。

 中国沿岸警備隊の船は過去数カ月、フィリピン軍がシエラマドレ号上の海兵隊員に補給物資を送るのを阻止するため、放水砲の発射を含む攻撃を行っている。


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