アキリーノ司令官は、中国以外の脅威、特に23年にそれ以前の累計よりも多くのミサイルを発射した北朝鮮を含む他の脅威についても懸念していると述べた。彼は、北朝鮮とロシアの協力や中国とロシアの関係深化に細心の注意を払っていると述べ、これらは「非常に懸念される」と強調した。
アキリーノ司令官は、同盟国との協力を含め、各々の能力の運用と提供の方策を構築する上でスピードと緊急性が課題であると述べた。アキリーノ司令官は、「この戦域での紛争を防ぐ能力を構築するには、関係諸国が新しい近代化能力を増強し、早急にそれらを提供し合える態勢を早期に確立することが必要になるだろう」と述べた。
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日本がすべきこと
この記事が紹介する退官直前のアキリーノ米インド太平洋軍司令官の東アジアから西太平洋に至る戦域に関する戦略評価は、直接の担当者としての評価に重みはあるが、世上聞かれる多くの評価との間に大きな開きはない。
この記事について特に注目したいのは、同司令官の指摘のうち、各同盟諸国の戦力強化の必要に言及した後、その能力を提供し合う方策の構築が急務であると述べた点である。この先、事態が緊迫するにつれ、同盟関係のマネジメントという観点からの諸課題が想像される。「同盟の力学」の作用と反作用という問題である。
米国とその同盟諸国との間では、欧州諸国であれ、韓国であれ、駐留米軍の地位に関するさまざまな問題が同盟関係の処理に当たる諸当局に課題を提示してきた。そして事態が緊迫度を高めるに従って、防衛協力の議論は指揮命令系統の統合問題に発展し、究極的には国家の主権という根源的問題に至る。
欧州や韓国とは異なり、わが国はいまだその段階には達していないが、古来、同盟軍の戦いでは指揮権を移譲した側の損害が大きくなるとの定評に鑑み、その観点からもわが国は自らの能力強化を早急に進めるべきだという声は傾聴に値する。
なお、報道によれば、林芳正官房長官はさる4月11日の記者会見で、「自衛隊の統合作戦司令部が米軍の指揮・統制下に入ることはない」と説明した由だが、水位はもう少し上昇しそうな気配がする。