ロシア・ウクライナ戦争の停戦交渉の行方が注目されているが、一朝一夕には進まない。力による現状変更の追認は日本にとっても死活問題になる。「Wedge」2025年4月号に掲載されている「民主主義が SNSに呑まれる日」記事の内容を一部、限定公開いたします。
トランプ2.0が始動し、ロシアとウクライナの戦争は新たな展開を迎えている。
2月28日に行われた米国とウクライナの首脳会談では、トランプ米大統領とゼレンスキー大統領が激しく応酬し、ウクライナの資源権益をめぐる交渉は決裂した。トランプは3月3日、ウクライナへの武器供与の一時停止を指示し、停戦交渉に応じるよう圧力をかけている。米国のウクライナ支援の先行きが見通せなくなったことを受け、欧州連合(EU)は6日、欧州の抜本的な防衛力強化のために約8000億ユーロ(約125兆円)の確保を目指す「再軍備計画」の推進で大筋合意した。
開戦から3年が経過した今、米欧同盟という前提は揺らぎ、ウクライナ、そして、欧州は岐路に立っている。インド太平洋では中国や北朝鮮が「力による現状変更」の試みを続けており、日本も自分事として捉える必要がある。停戦交渉と欧州の安全保障の行方を分析し、日本が果たすべき役割について考える。
2月28日に行われた米国とウクライナの首脳会談では、トランプ米大統領とゼレンスキー大統領が激しく応酬し、ウクライナの資源権益をめぐる交渉は決裂した。トランプは3月3日、ウクライナへの武器供与の一時停止を指示し、停戦交渉に応じるよう圧力をかけている。米国のウクライナ支援の先行きが見通せなくなったことを受け、欧州連合(EU)は6日、欧州の抜本的な防衛力強化のために約8000億ユーロ(約125兆円)の確保を目指す「再軍備計画」の推進で大筋合意した。
開戦から3年が経過した今、米欧同盟という前提は揺らぎ、ウクライナ、そして、欧州は岐路に立っている。インド太平洋では中国や北朝鮮が「力による現状変更」の試みを続けており、日本も自分事として捉える必要がある。停戦交渉と欧州の安全保障の行方を分析し、日本が果たすべき役割について考える。

物別れに終わった米国とウクライナの首脳会談。両国の隔たりがドラマチックに可視化された(THE WASHINGTON POST/GETTYIMAGES)
ロシアによるウクライナ全面侵略から3年がたった中で、停戦に向けた動きが活発になっている。
その中心にいるのは、米国のトランプ大統領だ。率直なところ、ウクライナも欧州もトランプに翻弄されている。欧州の将来に直結する問題であるにもかかわらず、米国が主導権を持ち、それに慌てる欧州という図式が露呈した。
昨今の報道でまず注意すべきは、停戦の行方に焦点があたるものの、トランプ政権の動きに関する限り、軸は米露関係の正常化だという点である。ウクライナ停戦を実現するために米露関係の正常化が必要になるのではなく、米露関係正常化のためにウクライナ停戦が必要という方が、トランプ政権の発想には近い。
そして、国際社会での孤立を打破する観点で、米国からすり寄ってきたような状況は、ロシアにとっては願ってもない展開だ。しかもロシアは停戦を急いでいない。
そして実際、ウクライナ停戦に関して、2月末時点で、まだ具体論には入っていないとみられる。つまり、実質的な停戦交渉はスタートすらしていないのである。