欧州が最も避けたいのは、ウクライナの主権が損なわれたり、ロシアによる再侵攻がいつでも可能であるような状況が生じたりすることだといえる。「欧州の将来を米露に勝手に決められたくない」ということでもある。
「停戦」と「和平」の線引きも見えない
今後は、まず停戦合意をつくり、そのうえで、2024年から延期になっているウクライナ大統領選挙を実施し、最終的な和平合意を目指すという三段階が想定されると報じられている。しかし、最初の「停戦」がどのような要素を含むものかは不明である。
中東でよくみられるような、交渉のための一時的な戦闘停止を意味する可能性もある。その場合は、戦闘停止のための条件を詰めるのが停戦交渉になり、領土や占領地の扱いやウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題などについての合意は先送りされる。ロシアの再侵攻を防ぐためにウクライナが求める「安全の保証」についても、その後の課題ということになる。
当面の「停戦」と恒久的な「和平」は分けて考えるべきだと指摘されてきたが、その線引きは自明ではない。トランプ政権が停戦という成果、あるいは、それをショーアップすることを急ぐのであれば、実質的な内容はほとんどない、停戦交渉のための限定的な戦闘停止になる可能性が高くなる。
他方で、停戦を急いでいるはずのトランプ政権自身が、自らの交渉方針を決定したようにもみえない。そして、交渉においては、急いでいる方がより多くの譲歩を迫られるのが常でもある。
戦闘の停止を考える場合は、それをいつ発効させるかが焦点になる。というのも、戦闘停止で前線が固定化される前に、ロシアは1メートルでも占領地を拡大したいと考えるだろうし、ウクライナは1メートルでも領土を奪還したい。そのため、戦闘停止発効日に向けて、戦闘は激化しがちだ。
また、戦闘停止違反も、様々に報告されることになるだろう。戦闘停止はいつ崩れてもおかしくない。
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