2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月31日

 たとえ対中関係を変える意思があったとしても、マネレが動ける余地はほとんどない。なぜなら、中国はソロモンの主要輸出品である木材の大部分を買っており、同国最大の貿易相手国だ。対中関係を後退させようとすれば、問題が起きる。

 与党の選挙中の声明は、「中国がソロモンからの輸入に貿易措置を取れば、ソロモンは自滅する」と警告した。マネレは、経済や安全保障での対中協力を後退させる意図は示していない。

 豪州にとってはどうなるか。選挙前日のインタビューで、マネレは中国と豪州を「平等なパートナー」として評価した。豪州としては、「選び取ったパートナー」と言って欲しかった。

 しかし、マネレは豪州とうまく協働した長い歴史を持ち、政界に入る前は高級官吏として他の国際パートナーともうまく働いて来た。それゆえ、安全保障協力など微妙な問題の協議は容易になろう。

 今後は、米国も面談予定が取れるかもしれない。ソガバレの時は困難だった。豪州は、同国との関係と数十年にわたる信頼できる安全保障の提供国としての重要性を再確認したい。移民や労働の移動、インフラ・ビジネス拡大、経済援助等でも経済発展に貢献できる。

 重要なのは経済だ。マネレ政権の成功の成否は、国内問題への対処に掛かっている。開発、医療、教育、インフラの改善が、国民の期待だ。

 国民にとり支援国が何処かは重要ではない。しかし、もっと均衡のとれた外交政策は、指導者が国の主権を犠牲にしてひとつの大国と過度に連携することはないとして国民を安心させるだろう。

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政権交代を受け入れた議会

 4月17日の議会選挙とその後の政権交替が平和裡に進んだことは評価される。わずか予想外だった。治安措置もとっていた(豪、ニュージーランド〈NZ〉、フィジー、パプアニューギニア〈PNG〉が警察部隊等を派遣。日本等は選挙監視団を派遣)。

 与野党は、選挙の結果を受けいれている(与党OURは第一党になったものの議席の半分を失い、野党DPやUPは議席を伸ばした。当選者の半分は新人だった)。従来の地域勢力間の対立やホニアラの暴動等の情報もない。


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