浮かび上がる汚職問題
戦争の〝効率的〟な遂行に向け、経済面からのてこ入れを図ったロシアのプーチン政権だが、一方でそれは、これまでのウクライナ侵攻が極めて非効率であったことを示していることにほかならない。開戦直後のキーウ制圧失敗や、ハルキウ州からの大規模撤退、ヘルソン州の州都ヘルソンを奪還されるなど、ウクライナに対し4倍超の兵員を擁しておきながら、ロシア軍は失敗を重ねた。ショイグ前国防相の手腕に問題があった事実を、ようやくプーチン政権も国民の前で認めた格好だ。
さらに、ショイグ氏が更迭された直後には、その腹心だった部下が2人、収賄の容疑で逮捕された。国防省内で汚職が広がっていた実態がうかがえる。ただ現実には、そのような事態は幅広く起きているとみられ、2人は国防省内での規律を引き締めるために、〝見せしめ〟としてこのタイミングで逮捕されたのが実情とみられる。
ロシアの24年予算に占める国防費の割合は約3割とされ、これはソ連末期の水準に匹敵する。このような支出は短期的にはカンフル剤のように経済の底上げにつながるが、軍事支出はほかの民生分野への投資のように、利益を生んで成長、再投資が行われる産業ではない。
ウクライナ侵攻で膨張する国防費が、ベロウソフ氏のもとでどこまで効率的に支出されるかは不透明だが、ソ連崩壊以降進めてきた産業の多様化などのロシアが目指してきた多くの経済政策は、ウクライナ侵攻により事実上破綻したのが実態だ。