2024年7月16日(火)

プーチンのロシア

2024年5月29日

 経済という側面では、軍事支出は侵攻開始以降急激に増大し、現在はGDPの8.7%が国防費に充てられているという。21年時点では2.6%であり、国防費が巨大化している実態が分かる。

中国とは制裁への対抗策を協議か

 プーチン大統領は大統領再任後の最初の外遊先として、5月中旬に中国を訪問した。習近平国家主席との首脳会談も、主要議題は経済だったとみられる。

 背景には、米国が事実上、ロシア・中国貿易に焦点をあてた新たな制裁を昨年末から導入したことがある。米国のバイデン政権は、ウクライナ侵攻に関連して米国の制裁対象となっている企業や個人との取引を支援した第三国の金融機関に対し、制裁を科す方針を表明した。

 これは、中国によるロシアとの巨額の貿易が、ロシアの軍事産業を支えているとの米側の強い懸念が背景にある。米側の発表を受け、米国での事業継続ができなくなることを恐れた中国の金融機関は相次ぎ、中国企業から製品を購入しようとするロシア企業の代金支払いなどの取引を停止した。

 中露間の貿易額は、ロシアがウクライナ侵攻を開始した22年に、輸出入ともに前年比で二桁増の伸びとなっていた。ロシアの主要輸出産品である原油を中国が大量に購入しているという側面もあるが、同時にロシアも、中国からの輸入を拡大している。

 自動車などの輸入も増大しているが、中国はロシアに対し、半導体や電子回路、工作機械など、軍事転用が可能な民生用製品の輸出を継続しているとされる。結果、ロシアは防衛産業の立て直しに成功した。

 米国は、軍事転用が可能な民生品を、ロシアに事実上供給しているとして中国を批判し、その動向に強い懸念を示していた。米財務省は5月1日には、ロシアに対し赤外線探知機やドローンの部品など、軍事転用が可能な物資の輸出に関与したとして、中国やトルコなど約300の企業や個人に制裁を科すと表明していた。 

 プーチン氏は中国・ハルビンでの会見で、対露制裁を「極めて不当だ」と批判し、事態の解決には、政府レベルでの支援が必要との認識を示した。中露首脳会談においても、制裁への対応を軸とした経済分野の議題が中心となったのは確実だ。


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