2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月7日

 台湾は、中国からの安全保障上の脅威に対処するため、昨年、国防予算を約14%増加させ、約190億ドル(GDPの2.5%程)にした。また、徴兵制の訓練期間を4カ月から1年に延長した。

 「自衛への強いコミットメントがなければ、同盟国からの支援も期待することはできない」。これが、台湾がウクライナから学んだ最も重要な教訓である。

 台湾海峡の平和と安定は、台湾問題を国際問題として扱うことによってのみ維持できる。国際社会は中国の脅威を抑止するために、取り組むべきことが3つある。

 第1に、中国による威圧への対応である。中国は台湾に対して、偽情報、選挙妨害、台湾海峡の中央線を越える戦闘機の出撃等の軍事的挑発を行っている。民主主義諸国は、このような行為には結果が伴うことを中国に示すべきである。

 第2は、経済統合である。台湾と世界との経済的連携に、中国が口を出すことを許してはならない。台湾と米国は現在、貿易に関する米台イニシアティブの第2段階について交渉を進めている。

 第3点は、国連決議の誤った解釈に反対することである。台湾の国連総会決議2758は1971年に採択され、中国議席を北京に与えたが、台湾が中国の「一つの省」とする中国の主張は間違いである。

 民主主義諸国は、権威主義者が正義と自由を踏みにじるような世界秩序を誕生させることを許してはならない。今後数年間、台湾の運命は、ウクライナ同様、世界の平和と自由を守るために、民主主義諸国が失敗してはならない重要な試練となるだろう。

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台湾新総統就任前後に起きた変化

 「ウクライナを守ることは、台湾を守ることである」との考えは、とても時宜を得た的確な指摘である。この論文は、世界経済および地政学における台湾の重要性、中国の狙い等を明確に説明している。台湾の運命は、ウクライナと同様に、世界の平和と自由を守るために、民主主義国家が失敗してはならない重要な試練だと結論付けている。

 台湾では、頼清徳・台湾新総統の就任式が5月15日にあったが、その前後にウクライナと台湾に関する重要行事が、目白押しであった。米議会におけるウクライナ支援が4月23日に決定し、習近平国家主席のフランス、ハンガリー、セルビア3カ国の訪問が5月5日~10日に行われ、第二次世界大戦の欧州での終戦記念式典が5月10日だった。

 また、核使用に言及したプーチン大統領の演説が5月9日にあり、その後、プーチン大統領は、5期目大統領就任後初の外国訪問として、5月16~17日と中国を訪問した。


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