2024年11月24日(日)

令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史

2024年6月13日

 「そうはいっても、資産が741兆円あり、そのうち金融資産は366兆円である。これを1144兆円の国債の一部の返済に充てると、ネットで約800兆円の金融負債しかない」と指摘する人もいる。しかし、それはBSの貸方にある国債以外の金融負債の存在を度外視している。金融資産の366兆円は、国債以外の金融負債と一つひとつ見合っているため、金融資産を売却して換金したとしても、国債の償還には充てられない。

 なお、資産のうち有価証券126兆円の中には、一定規模の米国債がある。日米関係を維持するためにも米国債を簡単には売却できない。仮に、日米同盟を度外視して全て売却して円に換えたとしても、BSの貸方の政府短期証券(いわゆる外為証券)という負債の返済にしか充てられないのである。

有形固定資産は
国の領土で、売却などできない

 「それなら、195兆円の有形固定資産を売却すればいいのではないか」と思う人もいるかもしれない。これは、国が保有する道路や港湾、橋梁、河川の護岸などである。まさに、「日本のインフラ」であり、「日本の国土」そのものだといっていい。しかし、これらを「切り売り」することは、安全保障上の観点や治水上の観点からも、重大な懸念がある。例えば、日本の敵対勢力や悪意ある他国の人間が日本人を装い、国道や橋梁の一部を買い取り、高額の通行料を課したり、通行自体を禁止したりすることも十分あり得る。

 そうなれば後の祭り。日本が「返却」を求めても、売却価格の10倍、100倍を突き付けられることだって考えられる。こんなことに国民が納得するはずがない。

 つまり、有形固定資産は、日本の国土(領土)の一部でもある。決して売却できない、売却してはいけない資産であり、売却できるという考え自体、机上の空論だ。

※こちらの記事の全文は「Wedge」2024年6月号で見ることができます。

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Wedge 2024年6月号より
平成全史
平成全史

「平成全史」特集後編では、事件、災害、雇用、教育など、主に社会問題について考える。「失われたX年」と、過去の栄光を取り戻そうとするのではなく、令和の時代にどのようなビジョンを描き、実行していくのか?それは、今を生きるわれわれ自身にかかっている。


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