Foreign Policy誌(Web版)が5月13日付けで、米国が中国やロシアに比して人口面で大きな強みを持っていることを指摘する論説‘The United States has a keen demographic edge’を掲載している。概要は次の通り。
女性一人当たり生涯に何人の子どもを産むかを示す合計特殊出生率は、米国において2007年の2.12から現在1.7まで下がっており(人口問題の専門家は移民を計算に入れずに人口を安定させるには2.1の水準が必要と見ている)、米国の政治家は、米国の出生率の低下を嘆いている。しかし、こうした見方は、大国間競争の相手である中国とロシアがはるかに悪い状況であることを見過ごしている。
中国では、この10年間に、出生率が1.81から1.08まで低下した。中国当局は、35年までに1.3まで回復することを見込んでいるが、実際には、中国の出生率は、長年にわたった一人っ子政策の結果等により、さらに低下するとみられる。
兄弟なしに育った世代は、少人数の家族を選好するという傾向もある。都市化は、住居費の高騰、よりリベラルな社会的な規範、子どもを持つことの経済負担によって、出生率を押し下げる要因となる。全人口のうち都市部に住んでいる人の比率を示す都市化率が上がれば上がるほど、出生率を高めることはさらに困難になろう。
ロシアも人口面で課題を抱えている。1990年代に生まれた者たちが成人世代となっているが、ソ連の解体によって出生率が非常に下がった時の世代であり、人数自体が少なくなっている。
さらに、戦争を始めてしまったことが、人口状況にいくつかの面でマイナスの影響を及ぼす。第一に、前述の理由で元々数が少ない世代が戦死によって人口を失っている。ロシアの死者数は5万人と見込まれている。
第二に、戦争の開始と兵員の動員によって国外に脱出する人が大量に発生したことである。100万人がロシアを去ったとみられる。
第三に、国内総生産(GDP)の6%という記録的な水準に達している軍事支出が教育、医療その他の家庭を支援する支出をクラウドアウトしている。