2024年7月20日(土)

はじめまして、法学

2024年6月19日

 連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)、日曜劇場『アンチヒーロー』(TBSテレビ)など、法曹の世界に生きる人々を描いたドラマが話題を呼んでいます。法は、自然科学のような不変の法則とは異なり、「解釈」を変えることによって、あるいは「立法」することによって、時代に応じて変化を続けています。
 今回の記事では、法的な視点から「労働問題」について解説しています。全国にある労働相談窓口では、職場での嫌がらせ、いじめについての相談が急増しています。様々な「〇〇〇ハラスメント」に対して、どのような「労働法」が整備されているのでしょうか。
*本記事は中央大学法学部教授の遠藤研一郎氏の著書『はじめまして、法学 第2版 身近なのに知らなすぎる「これって法的にどうなの?」』(ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
(PonyWang/gettyimages)

過重な負荷と「仕事の疲れ」

【事例】
 Aさんは、インターネットサービスを運営する会社に勤務し、WEB開発業務を担当していました。新しいプロジェクトの開発リーダーを任されることになった12月頃から、労働時間が以前よりも急激に増加し、月100~120時間の残業が続くこととなりました。
 翌年の4月からは、徹夜や数時間の仮眠をとるのみで働き続け、時間外労働(残業)は月200時間に達していました。ある日Aさんは、仕事中に、くも膜下出血を発症して倒れ、なんとか一命はとりとめたものの、右半身まひの後遺症が残り、その後も復職できていません。

 このような事件は、よく耳にすることです。世界から日本人は働きすぎだと言われ、ニュースなどでもことあるごとに、働き方の見直しを訴える特集が組まれています。大手広告代理店の新入社員が、2015年末に過労による自殺をしたニュースは、記憶に新しいかもしれません。それでも、状況が劇的に改善されたという話は聞きません。

 次の図表を見てください。業務における過重な負荷により脳血管疾患または虚血性心疾患等を発症したとする労災請求件数は、過去10年余りの間、毎年、700~900件ほどあります。その中で、支給決定(認定)件数も、200~300件程度となっています。

 さらに、勤務問題が原因の1つと推定される自殺者数は減少傾向にありますが、とくに、「仕事の疲れ」による自殺が毎年、3割程度を占めています。

 国のさまざまな政策にもかかわらず(たとえば、平成26 (2014)年に「過労死等防止対策推進法」が施行されましたし、平成27(2015)年には、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されています)、日本の労働環境はあまり改善されていないように感じられます。


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