2024年7月27日(土)

はじめまして、法学

2024年5月28日

連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)、日曜劇場『アンチヒーロー』(TBSテレビ)など、法曹の世界に生きる人々を描いたドラマが話題を呼んでいます。法は、自然科学のような不変の法則とは異なり、「解釈」を変えることによって、あるいは「立法」することによって、時代に応じて変化を続けています。
今回の記事では、法的な視点から「所有権」について解説しています。他人の物であっても、所有権を取得することができる「取得時効」とは、どのようなものなのでしょうか。
*本記事は中央大学法学部教授の遠藤研一郎氏の著書『はじめまして、法学 第2版 身近なのに知らなすぎる「これって法的にどうなの?」』(ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
(Kelvin Murray/gettyimages)

拾った物の「所有権」は誰のもの?

 所有権の取得原因の中心となるのは「売買契約」と「相続」です。しかし、所有権の取得原因はそれだけではありません。時には、物を拾うことによって、所有権を取得するということもあります。具体的にお話ししましょう。民法に、こんな規定があります。

民法239条1項
所有者のない動産*1は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

 これを無主物先占といいます。誰の所有物でもない物は、拾って、所有の意思をもって物を所持し始めた人に所有権が帰属するというルールです(ただし、動産に限定されることには注意してください。無主の不動産は、国庫に帰属します)。たとえば、散歩中に見つけた昆虫を採集した場合、一般的には、採集した人がその所有権を取得できるのです。

 売買契約や相続は、前に所有権を持っていた人から権利が承継される形で、新たに所有権を取得する人が現れるという類型ですが、無主物先占のような取得は、みずからが「原始的」に所有権を取得する類型といえます。これを原始取得といいます。

*1 動産は、「不動産以外の物」と定義される(民法86条2項)。そして、不動産とは、「土地及びその定着物」のことを指す(同法1項)。すなわち、土地とその土地に定着している物(建物も含む)以外はすべて動産となる。机、パソコン、宝石、本などさまざまな物が動産に属する。

 

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