メキシコ大統領・議会選挙でロペス・オブラドール大統領の後継者となるシェインバウムと与党連合が圧勝したことにつき、フィナンシャル・タイムズ紙のラテンアメリカ担当のストットが、解説記事‘Claudia Sheinbaum’s mandate is huge but so are her challenges’で、政治的勝利に関わらず、財政難や治安問題、対米関係、前任者の路線の維持と外国投資への影響など課題も大きい、と分析している。要旨は次の通り。
6月2日の大統領選挙でクラウディア・シェインバウムが地滑り的勝利を収めたカギは、「再分配」という一言に集約される。有権者は、憂慮すべき凶悪犯罪や民主主義制度の崩壊に目をつぶり、その代わりに、貧困と格差に悩むこの国の社会正義のための改革を約束した左翼民族主義者ロペス・オブラドールの側近であるシェインバウムに報いたのだ。
米国・カナダとの30年にわたる自由貿易により、メキシコ北部は繁栄したが、中央部や南部の人々、あるいは低所得者層には富がほとんど行き渡っていない。国民の多くは、過去数十年間、良好な経済の恩恵にあずかる人がいる一方で、自分たちは取り残されてきたと感じている。
シェインバウムの勝利は、挑戦者であったガルベスに約30ポイントもの差をつけ、彼女に強力な信任を与えた。不信任された野党連合は、長期化する政治的困難により分裂する可能性を高め、消滅する可能性が高いとの見方もある。
シェインバウムの国民再生運動(MORENA)と友党である労働党(PT)と緑の党(PVEM)は、議会で絶対多数を確保し、改憲に必要な3分の2の多数を獲得する勢いだ。議会の議席数は重要で、ロペス・オブラドールは、9月に政権を去る前に承認を得たいとして20項目の憲法改正案を提出している。シェインバウムは選挙キャンペーンで憲法改正を支持しており、改正が早急に進む可能性は高い。
メキシコには他にも深刻な問題がある。ロペス・オブラドール政権下で22万人近くが殺害または行方不明になっており、犯罪組織は広大な地域と経済のうまみのある部分への支配を拡大している。