2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月20日

 この論説が強調するようにシェインバウムは歴史的な得票率で当選したとはいえ、直面する課題も難しく巨大であり、特にロペス・オブラドールの負の遺産ともいえる財政状況の悪化の中で、効果的な治安対策、医療制度の立て直しや公約した福祉の拡充ができるのか、経済的合理性に問題ある製油所等の大型プロジェクトや負債を抱える非効率な国営石油会社の問題について、リーダーシップを発揮できるのか、すなわち、院政を敷こうとするであろうロペス・オブラドールとの関係でどこまで独自性を発揮できるかが課題である。

 対外的には、米国との関係で、移民、麻薬(フェンタニル)、貿易の問題をうまくマネージすることが最重要課題である。これらは米国にとってもいずれも重要な問題である。

 特に、中国がメキシコ投資を通じて米国市場への迂回輸出を行っている問題の今後の成り行きが懸念される。シェインバウムは内外の投資を促進すると言っているが、メキシコへの中国投資が更に増大し中国との経済関係が深まって行けば米国との基本的関係やUSMCAに悪影響を与える可能性も排除できないであろう。

外交、日本との関係は?

 他方、ラテンアメリカ以外のマルチの外交には関心を示さなかった現大統領とは違って、シェインバウムは、気候変動問題にメキシコが果たすべき役割があると考えている由でもあり、そういった面でのメキシコ外交が復活することも期待される。アジア太平洋経済協力会議(APEC)や主要20カ国(G20)にも出席するのであれば、現大統領との違いをアピールすることにもなるので、歴史上初のメキシコ女性大統領のこれらサミットへの出席が期待される。

 また、日本企業のメキシコへの投資への関心に鑑み、日本も新政権とは首脳レベルでの交流等、対メキシコ関係の活性化すべきだろう。

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