社外取締役の選任方法を疑問視
古田取締役によれば「『アクティビスト』の株式保有期間が3~5年と、以前と比べて長期化する傾向にある。かつてのような短期の値上がり益を狙う投資姿勢からの変化がみられる。アクティビストの主要スポンサーである大学や年金基金などは、長期の運用成果を求めており、こうしたことも影響している。経済産業省が昨年7月に示した『事業再編実施指針』によると『アクティビストの提案には真摯に検討すべき』という趣旨の文言が入っており、企業もこうした提案を無視することが難しくなってきている。
総会での提案をみると、取締役選任議案では社外取締役の選任に関して反対票が多くなっている。これは日本企業の社外取締役はまだまだメインバンクや取引先などの出身者が多く、その独立性について問題視している」と指摘する。社外取締役については、かねてから社長と親密な人物が選任されるケースが多いなど、その独立性に関して疑問点が指摘されてきていた。こうした点からみると、アクティビストの主張は、日本企業の経営陣に緊張感をもった経営をさせるためには良い刺激になるのかもしれない。
同取締役は「今の法律では事前警告型の買収防衛策を導入していない限りは、アクティビストなどによる株の買い増しを防ぐ手立てがない」と述べ、アクティビストに大量の株式を取得されてしまうと、企業側の自律的な対応が難しくなることに警鐘を鳴らしている。
「素直に向き合う」
ニッセイ基礎研究所の井出真吾・チーフ株式ストラテジストは「株式所有構造の変化(持ち合い減少)や、機関投資家が、投資先企業の株主総会でどのような態度で臨むべきかを定めた行動原則であるスチュワードシップ・コード(SSコード)などの導入により、『物言う株主』のイメージが改善したことも挙げられると思う。かつてはアクティビストというと、『ハゲタカファンド』や『乗っ取り』など過激で自分たちの利益しか考えていないイメージが強かったが、近年は対話を通じてWin-Winを目指し一般株主も恩恵を受けるケースが増えている。
こうした真っ当なアクティビストの提案に機関投資家や個人投資家が賛同しやすくなったのではないか」と指摘、企業側の対応策としては「株主と素直に向き合ったうえで、株主の意見を取捨選択する姿勢が求められる。もちろん経営者は取捨選択の結果責任を負うことになる。東芝や三菱電機の不祥事は極端な例だが、現代の上場企業では、もはや『ご都合主義』『内輪の論理』はまかり通らない」と述べている。