2022年9月26日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2013年12月6日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

坂井氏:導入を検討すべきですが、ちょっと状況説明が要ります。まず日本は脳死者からの移植についてハードルが高く、それゆえ日本の移植医たちは、不適合ペアでも移植ができるよう医療技術を発展させてきたという経緯があります。もちろんこれは見事な達成です。だからもう日本では患者とドナーの組み替えは要らない、と言ってしまいそうになる。

 しかし不適合で移植するためには、患者は強い免疫抑制剤を服用する必要があるし、金銭的な負担も増えます。それなら適合するドナーから腎臓をもらえばよいのではないか。それによる肉体的、医療経済的な負担の軽減は少なくないはずです。

 そして、これは私の推測ですが、おそらく今の医療技術でも、全ての不適合ペアに移植ができるわけではないと思います。腎移植マッチングで救われる患者は潜在的にはそれなりに存在するのではないか。

――全体を伺うと、メリットが結構あるのではないかという印象を受けました。

坂井氏:そうですね。あと、腎移植マッチングに限ったことではないですが、新しい制度を導入するときの大きな問題に、educated incapacityがあります。

――それはどういうことですか?

坂井氏:ちょっと日本語で適訳が見付かりませんが、ここだと「考えすぎると、制度導入の問題点ばかりが目について、メリットがかすれて見える」ような意味です。問題点が目につくのは当たり前なんです。現状と照らせばどんな面倒なことが起こるかは想像しやすい。一方でメリットはまだ見たことがないものだから、明瞭に認識しにくい。そういう思考のバイアスですね。制度に携わる者はそのバイアスを「ああこれはeducated incapacityだ」と補正する習慣が大切だと思います。もちろん何でも制度を変えればいいと言っているわけではありません。

――なるほど。本書には、腎移植マッチングを日本でやるとしたら、医療側にきちんと金銭的なメリットがあるように制度を作る必要がある、と書いてあります。

坂井氏:これは一般的に言えることですが、インセンティブやキャパシティーをまともに考えないで、「いいことだからやれ」とか「とにかく競争しろ」のような安易な号令や制度設計をするのは一番駄目です。絶対うまくいかない。文部科学省がよく大学行政でやって失敗しています。

――文部科学省つながりというわけではありませんが、学校選択マッチングについて言えば、学校選択制は東京の公立小・中学校ですでに行われていますね。

坂井氏:行われてはいますが、大抵の場合、学生側は1校しか希望できないんです。だから本格的ではないですね。これについては政策研究大学院大学の安田洋祐さんが詳しく調査されていて、彼が編著した書籍『学校選択制のデザイン』(NTT出版)に詳細が載っています。

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