2022年10月7日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2013年12月6日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――なるほど。「あとがき」で基礎理論の重要性に触れていましたが、そことつながります。ところで日本では周波数オークションは未導入だとあります。

坂井氏:日本はOECD諸国で唯一、周波数オークションをやってないんです。民主党政権はやるつもりがあったんだけど、自民党政権に戻ってやはりやらないことになった。昔は日本の周波数行政は「周回遅れ」と言われてたんですが、今はもう競技場を逆走しているような状態ですね。逆向きに独走です。なんかもう、ここまで来ると、逆に凄いですよね。応援したくなってくる。

――他にオークション理論の活用は何がありますか。

坂井氏:身近な例だと、gmailを開くと画面の右横に広告が出ますが、その広告枠はオークションで販売されています。その販売方式は、それなりにオークション理論の知見が用いられています。実際のルールはかなり複雑ですが。

 重要なのはこれから日本政府がオークションを活用することです。まず2020年の東京五輪開催に伴い、成田空港や羽田空港の飛行機の発着枠を増やそうという動きがあります。増やすのは結構なことなのですが、それをどう配分するかが大事です。これまでのような行政裁量ではなく、公正なオークション市場を用いて効率的な割り当てを実現すべきです。

――行政裁量での割り当てと、オークションでの割り当てではどう違うのでしょうか?

坂井氏:例えば、自分の時計ひとつを、たくさんいる買い手に売るケースを考えてみてください。どの買い手が、その時計にどれだけの価値を認めるか、どう有効活用してくれるかは、買い手一人ひとりにヒアリングしても分かりません。行政裁量もこれと同じで、企業にヒアリングしてもわかることはたかが知れているんです。

 ランナーが何人かいるとして、誰の足が速いのか。それを知りたければ、聞き取り調査や身体測定でなく、徒競走をしてもらえばいいというだけの話です。ハイエクは市場における競争を「価値発見の手続き」と呼びました。誰の足が速いか発見するために徒競走をするように、誰が一番高い付加価値を与えられるか発見するためにオークションをするわけです。

――ヒアリングだと、企業は自分たちに都合の良いことしか言わないかもしれませんね。

坂井氏:それは当然のことです。実際、2009年の日本の周波数免許の割り当ては、総務省が各企業にヒアリングを実施し、行政裁量で決めました。しかし、高得点を与え免許を交付したウィルコムがその後倒産という事態になっています。タダ同然で免許を割り当てて、しかもそれが有効活用されないというのでは困ります。国民の財産ですから。不透明な審査プロセス自体も問題です。最初に「坂井に高級車をやるのはムダ」という喩え話をしましたが、そんなことが実際に起こっているわけです。

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