今月は雨の日に読みたい一冊を選びました。家にじっと籠もるのにちょうどいい五冊です。
時代のヴォイス
「謎のDJのトークが昭和史と文学史と奇想を巧みにリミックスし、ヒロヒトと南方熊楠、森鷗外ら戦前・戦中期の文化人たちとの密かな絆を謳いあげる」という一冊。プロローグには早速、その南方熊楠が登場する。周囲が心配する中、熊楠のもとをわざわざ訪問する昭和天皇。和歌山県田辺湾に浮かぶ神島でのその静かな交流の様子は感動的だ。あくまで小説ではあるが、この時代を知ると共に、現代に続く「課題」についても考えさせられる一冊だ。
小説に魅せられた殺し屋
海兵隊員としてイラクに従軍したスナイパーであり、殺し屋を稼業とするビリー・サマーズ。殺し屋稼業から足を洗おうと考えていたが、200万ドルという報酬を示され、その仕事を受けることに。標的を待つために新人作家を装うビリーは、これまでの人生を振り返って文字にすることに次第に魅せられていく。「悪人しか殺さない」というルールを持つビリーは、最後の仕事をやり遂げることはできるのか……。ページをめくる手が止まらなくなる(上下巻)。