2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月25日

 確かに、ウクライナを支援するに当たり、エスカレーションのリスクを避けようとする米国やドイツの慎重な態度は、NATO条約5条による安全の保証に対する東部前線の諸国の信頼を高めることにはならなかったかも知れない。が、そもそもウクライナはNATO条約5条の事態ではないのだが、同盟国による救援は当事国自身の防衛努力が前提という原則が忘却されてはならないだろう。その意味では、ポーランドやバルト諸国はやるべきことを為しつつあるということであろう。

 この論説は、東部国境はEUの共同の努力で守ることが理にかなっていると書いているが、新設の防衛担当の欧州委員が、東部前線の国境要塞化のような戦略的な努力とのかかわりを持つようになるとはにわかに考えられない。この論説にもあるように、新設されたとしても、その職務の範囲は欧州の兵器産業の調整と再編にとどまるのではないかと思われる。このポストには東部前線の諸国出身者が適任だとして、ポーランドの外相ラドスワフ・シコルスキ等の名前が挙がっている。

それでも最優先はウクライナ支援

 もし、ロシアがウクライナを支配すれば、それはポーランド、フィンランド、バルト諸国の計画すべてを掘り崩すであろうと、この論説は末尾で述べている。要塞化を進めるにせよ、ウクライナが防波堤である。

 要塞化には時間を要する。これら諸国の努力をNATO全体の戦略に取り込むことも必要であろう。これら諸国にとって、ウクライナの戦況そのものが、彼らの安全保障に直接影響を及ぼすのだから。

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