2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2009年4月28日

 減反は農業の活発な地域にも足かせをはめている。千葉県や茨城県は農業産出額で常に2〜3位に顔を出す農業県だが、その両県が減反を達成しない減反ワースト県となっている。07年暮、農水省はこうした県に減反を強要するため「生産調整目標達成のための合意書」なるものを作った。全中会長やコメ関係団体の長、それに農水省総合食料局長が名を連ねた。政府・業界あげての締め付けで、業界では連判状や踏み絵などと揶揄されている。反発した千葉県の08年度「産地づくり交付金」は5億3000万円。新潟県50億円、秋田県61億円、北海道416億円と比べるとあきらかに違いすぎる。見せしめではないかといわれている。

減反で経営の自由度が奪われる農家も多い

 県レベルでこうした見せしめがあるのだから農家レベルでは恒常的に行われている。国が進める「認定農業者制度」は、農業のプロを認定するシステムだが、減反達成が認定の必須要件になっている。日本政策金融公庫の融資は認定農業者に認める仕組みで、減反に参加しない農家は政府融資の対象外となる。農村にあっては四半世紀にも及ぶ地域同調圧力によって減反参加を促すなど、我が国の農政は、市場で活躍する農家ではなく、減反に参加する農家をまともな農業者として育成してきた。

破綻を来した農協のコメビジネス

 我が国の稲作は、本来、輸出も射程に入れた国際競争力を持つ可能性があるのに、こうした可能性をすべて、米価維持政策が押しとどめてきた。ここは政策を根本的に見直し、減反は農家の意思や経営判断に任せ、国をあげての強制的な需給管理は今すぐにでもやめるべきだ。しかしその見直しがなかなか進まない。減反廃止を言い出すときまって反対が出て話は政治イシューとなり頓挫してしまう。減反は政治が絡む我が国農政の宿痾となっている。

 確かに生産者にとって米価は安いより高いにこしたことはない。だが、米価下落分は直接所得補償で行い、その間に農業の構造改革を進める政策を推進すればいいだけだ。こうした仕組みは国際スタンダードとなっているし、農家にとっても、収入補填は価格政策だろうが所得補償だろうがどちらでもいいはずだ。

 しかし事はそう単純ではない。農協が自らの政治力を最大限駆使し、米価維持、減反強化を譲らないからだ。減反問題の本質は全農(全国農業協同組合連合会)・農協問題といってもいいすぎではない。その理由は農協のコメビジネスを見れば一目瞭然だ。

 農協、特に全農のコメビジネスは、農家の委託を受けて卸等へ販売し、手数料を得るというもの。手数料は米価水準に準拠しているので、米価が下がることは彼らの手数料が減り、収入が減ることを意味する。過去には扱い量を増やして手数料の総額を確保することにも熱心だったが、いくらやってもあがらない集荷率に業を煮やしたのか、近年では米価維持一辺倒となっている。


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