2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2009年4月28日

 農業を活性化し国際的にも競争力のある稲作構造を作るには、米価維持だけを目的とした政策からの脱却が必要だ。利権が絡む内側だけの議論を早く収束させなければならない。とはいえ、長年政治に翻弄されてきた我が国の農業にそれができるとは思えない。

 減反廃止のためには、まずもって米価に需給動向が反映される様にすべきだし、米価下落へのセーフティネットが準備されるべきだろう。それには既にある「稲作所得基盤確保対策」(稲得)が参考になる。これは農家が自主的に基金拠出して米価下落に対処する仕組みで、農家の意欲が判断できる。参加農家の生産量は現在約400万㌧。我が国コメ生産量の5割、流通量の7割に相当する。この400万㌧を対象に直接所得補償を時限をつけて適用すればセーフティネットとして充分に機能するはずだ。

 また、競争力のあるコメ産業を作る構造改革も必要だ。これには「担い手経営安定対策」(担経)が参考になる。担い手と称する「主業農家」が参加しているが、参加農家は先の400万㌧の内、100万㌧を生産している。構造改革を促進するにはこれらに手厚い直接所得補償をしてみてはどうか。成否は「手厚い」補償水準にもよるが、少なくとも減反は確実に自主的なものに転換でき、零細農家の退出、主業農家のシェア拡大が生じるに違いない。300万㌧まで増えるか否かが成否の目安だろう。

 減反廃止のための制度は、このような仕組みや「米政策改革大綱」によって既にできているのだから、課題はそれを「逆進」させない様にすることだ。それには、族議員に左右されない内閣主導型の意思決定システム、つまり「議院内閣制」を徹底させる必要がある。農協には、政治的中立性の確保や説明責任を果たし、透明性を確保する措置が必要となる。農村現場には、減反政策をものともしない農業経営者への支援策が必要だ。彼らは、稲作から退出した兼業農家も含め、多くの農村居住者と共存しながら健全な農村社会を作る機関車役を担うに違いない。

◆「WEDGE」2009年5月号より

 

 

 
 

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