2024年11月22日(金)

2024年米大統領選挙への道

2024年7月5日

「若返り」と「ゲームチェンジャー」

 テレビ討論会の翌28日、トランプ前大統領は南部バージニア州での集会で、3人の民主党員の名前を挙げた。西部カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事、ハリス副大統領とミシェル・オバマ元ファーストレディである。

 トランプ前大統領は、ライバルないしライバルになる可能性がある人物にはニックネームをつけて攻撃をする。例えば、バイデン大統領は「寝ぼけたジョー」や「いかさまのジョー」と呼ばれている。

 16年共和党予備選挙を戦ったマルコ・ルビオ上院議員(南部フロリダ州)は、「小者のマルコ」とニックネームをつけられた。インディアンの血を引くことを自らのアピールポイントにしたエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党・東部マサチューセッツ州)は、「ポカホンタス」と揶揄された。24年共和党予備選挙に出た南部フロリダ州知事のロン・ディサンティス氏は、「聖人ぶった男」とニックネームを付けられた。

 トランプ前大統領は、ニューサム知事(Newsome)を「New-Scum」とニックネームをつけ、批判をしている。Scumは「人間のくず」という意味である。以前から集会で、ニューサム知事にこのあだ名をつけて批判してきた。

 トランプ氏は、バイデン大統領が選挙戦から撤退した場合、内心ニューサム知事が本命になるとみており、警戒をしているとみてよい。

 しかし、バイデン大統領が撤退すれば、ハリス副大統領を支持するのが自然だ。バイデン-ハリス陣営がこれまでに集めた選挙資金と各州の事務所は、ハリス副大統領が受け継ぐことになる。この資金がバイデン大統領とハリス副大統領以外の候補者に譲られることは法律上禁止されている。

 また、3894人の代議員は、バイデン大統領に忠誠心があり、もしバイデン氏がハリス副大統領を支持すれば、大半の票がハリス氏に回ると予想される。

 さらに、バイデン-ハリス陣営が、3月中旬から実施しているオンライントレーニングをはじめ、これまでバイデン-ハリス陣営の選挙運動に加わってきたボランティアをはじめとする運動員たちも、引き続きハリス陣営で働くことになる。

 ハリス副大統領を決して過小評価するべきではない。今のハリス副大統領は2年前とは異なり、いわゆる「修行」を積んできた。バイデン-ハリス陣営では、人工妊娠中絶問題で先頭に立って戦っている。同陣営ではハリスの存在は欠かせなく、価値が高まっている。

 ハリス副大統領は2020年民主党予備選挙のテレビ討論会で、バイデン大統領を破った経験を持つ。仮にトランプ前大統領とテレビ討論会が行われた場合、元検事のハリス副大統領は、バイデン大統領よりも厳しくトランプ前大統領の犯罪を追及し、「重罪犯」として描くことに成功するかもしれない。

 鍵を握るのは、ハリス氏の副大統領候補だ。黒人女性のハリス氏には、白人男性の組み合わせが妥当である。となると、激戦州ペンシルベニア州知事ジョシュ・シャピロ氏や中西部イリノイ州知事J.B.プリッカー氏の名が上がる。

 以下は、多少進み過ぎているかもしれないが触れておこう。

 女性票と激戦州ミシガンに重点を置くと、グレチェン・ウィットマー知事が最有力候補になる。ハリス大統領候補とウィットマー副大統領候補の組み合わせは、女性票、黒人票と激戦州ミシガンを獲得する可能性を高める。また、民主党支持者や無党派層にとって、エキサイティングなチケット(組み合わせ)である。

 ワイルド・カードは、ミシェル・オバマ元ファーストレディである。黒人女性同士のハリス氏とミシェル氏の正副大統領のチケットは、「ドリームチケット」であり、トランプ前大統領は、白人女性にも人気が高いミシェル夫人に女性票と黒人票が奪われる公算が大きい。

 ミシェル夫人が副大統領候補を受け入れる可能性は低いかもしれないが、仮にそうなればオバマ元大統領も全面に出て戦うことになり、トランプ前大統領にとってはかなり脅威になる。

 今のところ、継続の意向を示しているバイデン大統領だが、仮に選挙戦から撤退すれば、民主党の正副大統領候補は確実に「若返り」をする。これは、民主党にとって最大の「ゲームチェンジャー」になることは間違いない。

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