2024年11月22日(金)

現場搾取社会を変えよう

2024年7月16日

慢性的な労働供給不足に直面する日本。省人化による転換は急務だが、「人が必要なくなる」ということではない。「Wedge」2024年7月号に掲載されている「あなたの日常が危ない 現場搾取社会を変えよう」記事の内容を一部、限定公開いたします。

 岸田文雄首相は5月30日、中小企業などにおける「省人化」に向けた支援策を強化することを表明した。

イラストレーション・平井さくら

 人手不足が深刻化する中、「省人化」は急務である。人間の仕事の一部もやがて、AIやロボットに代替されていくことは間違いないだろう。そうした未来が確実視される中においても、「人間にしかできないこと」「人間がいなければできないこと」がある。それは一体、どのようなことなのか。エッセンシャルワーカーの職場を歩くと、見えてくるものがある。

ロボットには真似できない
必要とされる専門職の経験知

 「最終的に、私の祖母は施設に入りました。それを仕事として支えてくださるエッセンシャルワーカーの方を心から尊敬しています」

 そう語るのは、SOMPOケアのFuture Care Lab in Japan(東京都品川区)で副所長を務める芳賀沙織さんだ。左半身を動かせない祖母の入浴を手伝っていた幼少期の経験が、彼女の原点になっている。

 同所は、人間とテクノロジーとが共生する新しい介護のあり方をつくるために、SOMPOグループが開設した研究所だ。最前線の現場のニーズをくみ取り、現場で活用できるテクノロジーをもつ開発企業と連携する。

 一例を挙げると、「バナナ」や「パンダ」などといった特定の音声から、高齢者の「ものを飲み込む力」を測定する技術などがある。こうしたアイデアは、介護現場の専門職から発案されたものだ。経験知の応用によって最新技術に昇華された事例だろう。

 学生時代、介護施設に勤めていたという芳賀さん。当時、認知症のフロアを担当していると、何度も「帰りたい」と言う高齢者の方がいたという。


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