2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月26日

 前回の大統領選挙では選挙直前に保守強硬派の候補2人が立候補を辞退し、ライシ師への票の一本化が計られたが、今回、そのような努力は見られず、この敗北は、国民のイスラム革命体制への反感の強さを見誤った保守強硬派の驕りが招いたとも言える。

民意にも気を配るイスラム革命体制

 1979年に王制が崩壊した時にイラン国民は、社会民主主義等の選択肢の中からイスラム革命体制を選んだ。イランのイスラム革命体制は神権政治と言われるが、実は国民が選んだという矛盾を当初から抱えており、イスラム革命体制は民意にも気を配ってきた。

 ところが革命から40年以上が経って国民の体制離れがどんどん進む事態となり、あくまでもイスラム革命体制を堅持しようとする保守強硬派は、2020年の国会議員選挙以降、保守穏健派(イスラム革命体制の枠内で国民や国際社会と折り合いを付ける)、改革派(イスラム教を重視しつつも西欧型の民主主義を志向)を選挙の資格審査で排除して選挙を通じた民意を無視する態度に出た。

 今回の大統領選挙でも、事前の資格審査で残った候補者は、保守強硬派4人と改革派1人となり、投票前には、無名のペゼシュキアン氏が候補者に残ったのは、一応公平な選挙を行ったという形を整えるためなどと言われていた。

 その意味で、今回の決選投票の結果は、イスラム革命体制がどれだけ国民に嫌われているかを明らかにし、保守強硬派にとり大きなダメージだったことは間違いない。しかし、今更、保守強硬派が、国民が支持するイスラム革命体制に戻るはずがない。


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