2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年7月31日

 13年の三中全会では「資源配置における市場の決定的役割」という一節が高く評価された。従来は「基礎的役割」という表現であり、市場化改革の徹底への決意を表明するものと認識された。今年の三中全会では閉会直後のコミュニケで「決定的」という文言がなかったため、一部で方針転換を示すものではと取り沙汰されたが、最終的に発表された改革案では「決定的」という言葉が入っていた。

 また、同じく評価された表現として、13年三中全会の「公有制経済と非公有制経済(注:民間企業を指す)はともに社会主義市場経済の重要な構成パートである」との文言がある。こちらも公有制経済と非公有制経済への支持は「一切揺るがない」と同じ言葉で表現している。

 一部報道は、今年の改革案に「過剰な所得制度体系の合理的に調節する」という一文があったことから、富裕層や証券会社職員への引き締めを示唆したものと読み解いていたが、実は13年にも「過剰な所得は調整する」との一文があり、さほど違いは見られない。

 「言っていることとやっていることが違いすぎる!」と多くの人々が文句を言ってきた。もっと政府の権限を縮小して自由な民間経済を強化していくのではなかったか、と。ただ、習近平総書記の構想は当初から外部の見立てとは異なっていた可能性が高い。

 「資源配置における市場の決定的役割」についても、労働力、土地、資本、技術、データの流動化を促進する要素市場改革はかなり力を入れて進めている。外部が想定していた市場化とは政府の権限を弱めることだったが、習近平総書記が想定している市場化とは、電気自動車(EV)やAIなど成長産業により多くのリソースをつぎ込めるような体制作りであった。

 つまり、国家が強権を振るい企業活動に介入することと、市場改革は両立すると考えているように思える。

消えさった期待が経済低迷を加速させる

 このように考えると、今回の三中全会にサプライズがなかったこともうなずける。12年の就任直後から目指してきたとおりの政権運営と改革を続けてきたのであり、今後もそれを踏襲するだけというわけだ。

 問題は外部の期待の低下である。三中全会で打ち出される改革案は中長期をターゲットにしたもので、足元の景気低迷に即効性ある対策が打ち出されることはもともと期待されていなかったが、先の目標であっても人々の積極性を引き出す希望をもたらすチャンスではあったからだ。少なくとも13年の三中全会は勘違いがもたらしたものであれ、そうした熱気をもたらすものであった。

 挽回の好機を逸した中国経済は今後、ずぶずぶと低迷が続くことが懸念される。今年上半期の国内総生産(GDP)実質成長率は5.0%と現時点では政府目標をクリアしているとはいえ、先行きを不安視させる統計も多い。


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