2024年8月1日(木)

BBC News

2024年8月1日

アメリカのドナルド・トランプ前大統領は7月31日、黒人ジャーナリストのためのイベントに出席し、カマラ・ハリス副大統領の人種的アイデンティティーに疑問を投げかけた。

共和党の大統領候補に指名されているトランプ氏はこの日、シカゴで開催された全米黒人ジャーナリスト協会のイベントに登壇。その中で、ハリス氏はこれまでアジア系アメリカ人としてのアイデンティティーを強調していたが、最近になって「黒人になった」と、虚偽の主張を展開した。

「何年か前まで、彼女(ハリス氏)が黒人だとは知らなかった。彼女はなぜか黒人になって、そして今、黒人として知られたいと思っている」と、前大統領は述べた。

「だから私にはわからない。彼女はインド人なのか? それとも黒人なのか?」

ハリス副大統領は、前大統領の発言は「分断と(中略)無礼」という「昔ながらのショー」だと述べた。

ヒューストンで黒人学生団体の会合に参加していたハリス氏は、「アメリカ国民はもっと良いものを受け取る価値がある」と発言を批判。

「人々の相違が分断を促すものではなく、強さの本質的な源なのだと、そう理解しているリーダーこそ、私たちにふさわしい」と述べた。

民主党の大統領候補になるとみられているハリス氏は、インド出身の母親とジャマイカ出身の父親の間に生まれた。

自身の生まれ育ちについてハリス氏は、インドの伝統に触れながら成長し、しばしばインドを訪れたと語っている。一方で、母親は自分と妹の娘2人を、当時住んでいたカリフォルニア州オークランドの黒人文化に浸らせたという。

ハリス氏はその後、伝統的に黒人の学生が多いハワード大学に入学し、黒人が多数を占める女性学生団体「アルファ・カッパ・アルファ」に所属した。

連邦議会では、上院議員となった2017年に黒人の議員団「ブラック・コーカス」に加入している。

ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官は、「その人が誰であるか、どのように自分を認識するかを指示する権利は誰にもない。それは誰の権利でもない」と述べた。

リッチー・トーレス下院議員(民主党、ニューヨーク州)も、「誰がドナルド・トランプを黒人の裁定者に任命したのか」と批判。トランプ氏を「人種差別主義者の過去の遺物」と評した。

「1回目の司法試験に落ちた」

一連の発言を受け、イベントのモデレーターを務めていたABCニュースのレイチェル・スコット記者は、トランプ氏と白熱したやりとりを交わした。

前大統領は、自分はハリス氏の人種アイデンティティーの「両方を尊重している」が、「本人はそうではない。ずっとインド人だったのに、突然、方向性を変えて、黒人になったからだ」と続けた。

前大統領は過去にも、対立候補に対し、人種に基づいた攻撃を仕掛けている。

アメリカ初の黒人大統領となったバラク・オバマ氏(民主党)については、アメリカ生まれではないという虚偽の批判を行った。

共和党の候補者指名を争ったニッキー・ヘイリー元国連大使についても、ヘイリー氏が生まれた時に両親がアメリカ市民ではなかった点を取り上げ、大統領になる資格がないと間違った主張を展開した。

ハリス氏は、ジョー・バイデン大統領が大統領選から撤退し、有力な後任候補となって以来、こうした攻撃を受け続けている。共和党は、ハリス氏がその人種ゆえに選ばれたのだと批判している。

ティム・バーチェット下院議員(共和党、テネシー州)は先に、「多様性・平等・包括性(DEI)プログラム」をもじり、ハリス氏を「DEI副大統領」と呼んだ。

スコット記者が、ハリス氏は「DEIで雇われたと思うか」とトランプ氏に詰め寄ったところ、トランプ氏は「本当に分からない。そうかもしれない」と答えた。

前大統領はさらに、ハリス氏の大統領候補としての適性を攻撃。彼女が法曹界のキャリアの初期に司法試験に落ちたと述べた。トランプ氏の発言に、会場からはざわめきが起こった。

「私は事実を伝えただけだ。彼女は司法試験に合格しなかったし、合格するとは思っていなかった。その後のことは知らない。もしかしたら、合格していたかもしれない」と、トランプ氏は語った。

ハリス氏は1989年にカリフォルニア大学ヘイスティングス校の法科大学院を修了。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ハリス氏はが1度目の受験で不合格になり、2度目で合格した。

カリフォルニア州弁護士会によると、初回の試験で合格するのは受験者の半数以下だという。

モデレーターの記者を批判

シカゴでの討論は、スコット記者と前大統領の論争的なやり取りから始まった。スコット記者がはじめに、前大統領が過去に黒人を批判していたことについて尋ねると、前大統領は「非常に失礼な紹介」だと非難した。

スコット記者は、前大統領が過去に黒人ジャーナリストからの質問を「ばからしくて人種差別的だ」と呼んだことや、「マール・ア・ラーゴの私邸で白人至上主義者と夕食を共にした」と話していたことを引き合いに出した。

トランプ氏はこれに対し、「私はこの国の黒人を愛している。この国の黒人たちのためにたくさんのことをしてきた」と答えた。

前大統領は数時間後、自身のソーシャルメディアでスコット記者との会話を批判。「質問は無礼で意地悪で、しばしば意見表明という形だったが、我々はそれを打ち砕いた!」と投稿した。

(英語記事 'Is she black or Indian?': Trump questions Harris' racial identity)

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clly487evp9o


新着記事

»もっと見る