現代日本の「休めなかった」父親の本音
筆者の友人である編集者のY氏は、2年前、第二子の誕生に際して育休取得を願いながら、取得しなかった父親の一人だ。1カ月育休を取った同僚を見て検討し、妻も「育休を取れるなら、取ってもらいたい」と前向きだった。
しかし子の誕生が異動の時期に重なり、数週間の休みは業務上、困難に。元々育児を担う思いがあったので、週末やリモートワークの活用で、長期に渡るコミットをしようと方向転換をした。
「妻には取得できなかったことを少し根に持たれましたし、私も取れるに越したことはなかった、とは思います。ですが子育てに手がかかるのは、生後1カ月だけではありません。子どもが大きくなるまで参加する意識が重要だと感じます」
現在Y氏が担う二人の子どもの育児タスクは、平日は起床から朝の支度、保育園への送り、仕事が早く終わった日はお風呂の世話と着替え。週末は着替え、食事、散歩、遊びと多岐に渡り、仕事のある平日のワンオペでも、1~2日間は担当できるという。今年は妻に5日間の不在があり、保育園と実家の助けを得ながらワンオペで乗り切った。
Y氏のように育児を実践し、家族が育休取得を望んでいる父親でも、取得が叶わない――。父親の育休取得が「個人の意識」ではなく「休めない働き方」に左右されている、典型的な一例だろう。
取得経験者の言う「全員取るべし」
では同じ日本社会で、育休を取得した父親たちはどう考えているのだろう。Y氏と同じメディア業界で、編集長として月刊誌を担っているN氏は今年、専業主婦の妻との二人目の子の出産に際し、2カ月半の取得を叶えた。
「第一子の時には育休について知識と関心が薄く、経済的な不安もあったため、取得を全く考えませんでした。父親の育休は『共働き世帯のためのもの』という思い込みもありました。ですが仕事を介して、父親育児へのコミットが年々進んでいることを知り、後輩社員が育休を取得したことにも背中を押されました。妻からも強い要望があったため、決めました」
不在の間の仕事は、上司と外注の人材に引き継ぐことにしたが、その「外注の人材」を見つけるには大いに苦労した。また復帰後を考え、通常より数カ月前倒しで自分の業務を調整。強い意志を持って取得に望んだが、そのための段取りは決して容易ではなかった。
育休の最初のひと月は、家事全般と上の子の世話、夜半の哺乳瓶授乳を担当。ふた月目以降は特に分担を決めず、「やれることはすべてやる」を基本姿勢とした。