2024年8月8日(木)

BBC News

2024年8月8日

英イングランド各地で7日、人種差別に抗議する人々が、数千人規模の集会を開いた。同国ではこの1週間、反移民などを主張する人々による暴動と無秩序が続いており、これに対抗する動きとなった。

反差別のこうした集会は、ロンドン北部やブリストル、ニューカッスルなど、移民排斥デモが予想されていた場所で開かれ、おおむね平和的だった。参加した群衆は「難民を歓迎する」と合唱した。

この日には100件以上の集まりが予想されていたため、警察はさらなる暴力を懸念し、数千人の警官を配備していた。

イギリスでは、7月末のサウスポートでの殺傷事件で3人の女の子が殺害された後、犯人は亡命希望者だという誤った情報が広がった

これを受け、極右活動家らがモスクや亡命希望者が宿泊するホテルなどを襲撃した。また、店舗への放火や略奪もみられた。

先週始まった暴動にからみ、これまでに400人以上が逮捕され、140人以上が起訴された。すでに有罪判決が出ているケースもある。

イングランド各地の目抜き通りではこの日、さらなる暴力を恐れ、商店主たちが窓に板を張り、早々に閉店した。

移民専門の弁護士らは、極右の標的となりうる法律事務所や相談機関のリストがインターネット上で共有されたため、自宅で仕事をするよう警察から指示されていた。

しかし、イングランドの一部地域で行われたデモはおおむね平和的で、逮捕者はほんの一握りだった。

・リヴァプールでは、難民や移民への支援を表明するため、数百人が亡命サービスの事務所前に集まった。事務所は警告を受け、事前に窓に板を張った。

ロンドンではウォルサムストウノース・フィンチェリーでの抗議活動に数千人が参加した。ロンドン警視庁は「大きな事件なく」終わったと報告した。

・ブリストルでは、労働組合や反ファシスト団体、アジア系コミュニティーや黒人コミュニティーの人々など1500人が、極右へのカウンター(対抗)デモに参加した。

・ブライトンでは8人の抗議者が、国籍や難民の事案を専門とする法律事務所が入っているとみていた建物を取り囲んだ。しかし、2000人のカウンターデモ参加者に囲まれ、警察が包囲する建物への避難を余儀なくされた。

・ニューカッスルでは、ムスリム(イスラム教徒)を中心とする1000人のカウンターデモ参加者が、極右の標的リストに載っていた移民サービス企業のある建物の前の歩道を占拠した。

・アクリントンでパブに行く人々が通りを歩いていたムスリムたちを抱きしめる様子の動画が、ソーシャルメディアに投稿された。この動画は本物と確認されている。

・サウザンプトンでは、300~400人が広場に集まり「人種差別主義者は家に帰れ」、「人種差別は街から出ていけ」と合唱した。このエリアには10人ほどの反移民の抗議者がいたが、二つのグループは警察によって分離され、逮捕者は1人にとどまった。

7日の夕方には各地でほぼ平和的な光景が見られた。それまでに逮捕されて判決を受けた人々や、暴力に反対する姿勢を示そうとした人たちが、新たな暴動を起こそうとした人たちに影響を与えたのかは明らかではない。

クロイドンでは混乱が報告されたが、ロンドン警視庁は抗議行動との関連はないと述べた。警察によると、約50人が集まり、道路に物を投げたり、警官にびんを投げつけたりしたという。これにより8人が逮捕された。

北アイルランドのベルファストでも警察が攻撃を受け、放火されたり警官に物が投げつけられたりした。

7日にはアンジェラ・レイナー副首相が、亡命希望者が宿泊し、4日に暴徒の襲撃を受けたロザラムのホテル、ホリデイ・イン・エクスプレスを訪問した。

レイナー副首相は、暴動に関与した者は「法で裁かれる」と宣言し、「暴動に巻き込まれない」よう人々に呼びかけた。

一方、デモ参加者が移民について正当な懸念を抱いているかとの質問には、「街頭に出てきて、警察にものを投げつけたり、こうしたホテルを攻撃したりするのは、正当な不満ではない。それはこの国の政治のやり方ではない。誰もそれを容認すべきではない。これは凶悪行為だ。これは暴力だ」と答えた。

警察の治安部隊は、週末を含む「当分の間」、そして「それ以降」も、待機する予定だという。

また、英王室バッキンガム宮殿によると、国王チャールズ3世は各地の治安の乱れについて毎日報告を受けているが、差し迫った介入や、現地訪問はしない見込みだという。

(英語記事 Anti-racism protesters rally after week of riots

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/crlr81y79z0o


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