2024年8月8日(木)

BBC News

2024年8月8日

タイの憲法裁判所は7日、昨年の総選挙で最多の議席と票を獲得しながらも政権樹立を阻まれた、改革派の野党・前進党の解党を命じた。同党は総選挙で、王室に関する不敬罪を定めた法律の改正を公約に掲げていた。

判決はまた、前進党のカリスマ的存在のピタ・リムジャロエンラット元党首と幹部10人について、政治活動を10年間禁止した。

憲法裁は今年1月、前進党が総選挙で不敬罪に関する法律の改正を公約にしたことについて、違憲との判決を出した。そのため、今回の解党命令は予想されていた。

不敬罪に関する法律は、その厳しさで悪名高い。しかし憲法裁は、その法律の改正を訴えることは、立憲君主制の破壊を求めるに等しいとしていた。

今回の判決は、選挙で選ばれていない人々で構成する機関が、王政の権力と地位を維持するためにどこまでするのか、改めて示すものとなった。

ただ、この判決によって、タイ政治の改革運動が終わるわけではない。政治活動を禁止されなかった前進党の議員143人は、他の政党に移籍し、議会で改革派としての役割を継続するとみられている。

前進党はソーシャルメディアに、動画を添えたメッセージを投稿。「新たな旅が始まった。皆さん、一緒に歩き続けよう」と訴えた。

4年前は大規模抗議につながる

タイのチュラロンコーン大学のティティナン・ポンスディラック教授(政治学)は、今回の判決について、「タイが立憲君主制なのか、絶対君主制なのか、疑問が生じるかもしれない」と述べた。そして、「既視感がある一方、未知の領域でもある」とした。

タイでは2020年、総選挙で予想外に躍進した野党・新未来党が、解党を命じられた。同党はその後、前進党へと変わった。今回の判決は、これと大筋で似ている。

当時の判決は、新世代の学生活動家らが率いる街頭での大規模抗議行動に火をつけた。抗議デモは6カ月にわたって続き、より開かれた王室を求める異例の声も上がった。

以来、当局は不敬罪法を幅広く適用し、前進党の国会議員を含む数百人のデモ指導者を訴追した。

昨年の総選挙では、前進党は形勢が悪いとの見方もあった。だが実際には、そうした観測に反して第1党に。有権者らの変革を求める思いの強さが示された。

しかしその後、軍に任命された議員らで構成する上院が、前進党の政権樹立を阻止。保守的な政党からなる11党の連立政権が誕生した。

2020年の解党命令の時と違い、現在は多くの活動家が収監や亡命、訴追などで行動できなくなっている。そのため、当時のような大規模な抗議行動が起こる可能性はかなり低い状況となっている。

(英語記事 Thai court dissolves reformist party that won election

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy54yvr5gr0o


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