2024年8月8日(木)

BBC News

2024年8月8日

イギリスの最高裁判所は7日、9年前にイギリスからシリアに渡航し、イスラム武装組織「イスラム国(IS)」に参加した24歳の女性から、イギリスの市民権を剥奪(はくだつ)した英内務省の判断について、審理を認めない判断を示した。女性はイギリスの司法制度の中で最後のチャンスとして、市民権剥奪に異議を唱え、最高裁に審理を求めていた。

シャミマ・ベガムさんはバングラデシュ系イギリス人の両親の元に生まれ、イギリスの市民権を持っていた。15歳だった2015年、ISに参加するためにロンドンからシリアに渡航。ISの兵士と結婚し、子どもを3人もうけた。子どもは全員亡くなっている。

ベガムさんは2019年にシリアの難民キャンプで発見された。以降、イギリスに帰りたいと訴えている。

これに対し当時のサジド・ジャヴィド英内相は、ベガムさんにはバングラデシュの市民権があるとして、安全保障の観点からベガムさんのイギリスの市民権を剥奪した。一方、バングラデシュ政府もベガムさんの市民権を認めなかった。

ベガムさんは英政府のこの判断を違法だとしてイギリスで裁判を起こしたが、昨年に下級審で敗訴。今年2月の控訴審でも、内務省の判断を支持する判決が出され、3月にはこの件を最高裁で争う権利を失った。残された選択肢は、最高裁に直接、審理を求めることだった。

しかし最高裁の判事らは今回、全会一致で、ベガムさんの訴えは「議論の余地のある法理を提起するものではない」として、上訴できないとした。

ベガムさんの弁護団は声明の中で、イギリスの市民権を回復するために、仏ストラスブールの欧州人権裁判所(ECHR)にこのケースを審理するよう求めるなど、「あらゆる可能な法的手段を講じる」と述べた。また、英最高裁がECHRに「解決を委ねた」とした。

今回の判断では、ベガムさんから市民権を剥奪する過程で、ベガムさんが人身売買の潜在的な被害者であったかを考慮すべきだったかどうかについては、ECHRが判断すべき問題だとした。

最高裁判事らはまた、こうした懸念は英国法の下での決定には重大な関係がないとした、先の判決も支持した。

弁護団は、「イギリスの女性や子供たちが5年間もシリアのキャンプに恣意(しい)的に収監され、裁判の見込みもなく無期限に拘束されていることは、深刻な懸念事項だ」と述べた。

「イギリスと同じ立場にある他の国々はすべて介入し、自国民とその子どもたちの帰還を実現している」

ベガムさんの処遇については、アムネスティ・インターナショナルを含む人権擁護団体が批判の声を上げている。

一方、内務省は最高裁の判断を関知しているとしたうえで、「今はコメントをするのにふさわしい時期ではない」と述べた。

ベガムさんは現在も、シリア北部のキャンプに滞在している。

2015年にベガムさんと共にシリアに渡ったアミラ・アバセさんと、カディザ・スルタナさんは、共に死亡したとみられている。

(英語記事 Shamima Begum loses final UK court bid over citizenship

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clywv9p1gzko


新着記事

»もっと見る