2024年8月9日(金)

BBC News

2024年8月9日

ソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」を所有する米富豪イーロン・マスク氏は8日までに、イギリス各地の騒乱をめぐり、ニュース記事に見せかけた画像で陰謀論を広めようとする投稿を拡散した。同氏はその後、自分の投稿を削除した。

問題の投稿は、英紙デイリー・テレグラフのオンライン記事に見せかけた捏造(ねつぞう)の画像が元で、「イギリス各地で暴動に参加している者たちを、イギリス政府が南米フォークランド諸島に追放するため、緊急強制収容所を現地で建設している」という虚偽の内容だった。

イギリスの極右政党「ブリテン・ファースト」の共同代表、アシュリー・サイモン氏がこの捏造画像を「私たちはみんなフォークランドに送還される」とコメントをつけて拡散した。それにマスク氏が「強制収容所」とコメントを添えて、さらに投稿した。

マスク氏のこの投稿は170万回以上、閲覧された。マスク氏はその後、この投稿を何も説明せずに削除した。サイモン氏の投稿には「この記事は存在しない」という但し書きがしばし添えられた後、これも削除された。

マスク氏はこの投稿について、自分によるものだと認めていない。BBCはXにコメントを求めている。

テレグラフ紙は、このような記事は発表していないと強調している。テレグラフ・メディア・グループの広報担当は、「これは存在しない記事の見出しを捏造したものだ」と述べ、「関連プラットフォームに連絡をし、投稿を削除するよう求めた」のだと話した。

Xを含むソーシャルメディアが今回の騒乱でどのような役割を果たしたのかが、イギリスでは注視されている。イギリス政府とメディアを所管する放送通信庁(オフコム)は、暴力を扇動するような情報の拡散について、ソーシャルメディア各社に対応の強化を強く求めている。

コミュニティー・ノート

Xでは、投稿内容の真偽を利用者たちが検証できる「コミュニティー・ノート」機能があり、マスク氏はこれが優れたものだと評価している。

しかし、「コミュニティー・ノート」の表示には時間がかかりすぎるという批判もあり、今回のマスク氏の投稿は、「コミュニティー・ノート」が表示される前に削除された。

サイモン氏の投稿に「コミュニティー・ノート」がつくまでには10時間近くかかった。

マスク氏、イギリス騒乱について相次ぎ投稿

イギリスでは7月末にイングランド北西部で、ダンス教室にいた子供たちなどが刃物を持った男に殺傷される事件が起きた。殺人罪などで起訴されたのは、ルワンダ出身の両親のもとで英ウェールズ・カーディフで生まれた17歳少年。この少年の身元について事件直後からさまざまな偽情報と憶測がソーシャルメディアなどで飛び交ったことから、まずは事件現場の町で移民反対派がモスク(イスラム教の礼拝所)などを攻撃する騒ぎを起こした。

その後も、イングランドを中心に各地で極右や移民反対派による暴力と、警備にあたる警察との衝突、反移民派に対抗する勢力との対立など、混乱が続いている。

この事態についてマスク氏は当初から、さまざまな投稿などを続け、物議をかもしている。警察に発煙筒を投げつける群衆の動画に「内戦は避けがたい」と書き添えたマスク氏の投稿については、キア・スターマー首相の報道官がそのような発言は「まったく正当性を欠いている」と批判した。

その後、スターマー首相がモスクやムスリム(イスラム教徒)コミュニティーへの攻撃を容認しないとXで書くと、これにマスク氏は「『すべての』コミュニティーへの攻撃を心配すべきではないか」とコメントした。

マスク氏はそのほか、「フェイスブックへの悪質な投稿を理由に逮捕される」男性の動画に「ここはイギリスか、それともソ連か」とコメントして投稿した。

また、イギリスの警察を批判する投稿に、警察の対応は「一方的なものに見える」とコメントしている

スターマー首相はこれまでに、騒乱に参加した一部の暴徒には今週末までに「中身のある刑罰」が予定されると明らかにしている。暴力に直接的に、あるいはオンラインで間接的に扇動して関与した者は、処罰の対象になると首相はすでに言明している。

マスク氏の一連の発言について記者団に質問されたスターマー首相は、「各地の地域社会の安全確保にだけ、自分は注力している」として、そのための「警察の取り組みを全員で支持することが、とても大事だと思う」と強調した。

スターマー政権のハイディ・アレクサンダー法相は、マスク氏の一連の発言が「まったく正当性を欠いた」、「かなり嘆かわしい」ものだと批判している。

マスク氏によって極右アカウント復活

マスク氏が2022年にツイッター社を買収する前は、極右政党「ブリテン・ファースト」は同社の憎悪表現(ヘイトスピーチ)規制ルールに基づき、ツイッター・アカウントを持つことを禁止されていた。

しかし、「表現の自由絶対主義者」を自認するマスク氏は同社買収後、「法をはるかに超えた検閲に反対」するとして、「ブリテン・ファースト」のアカウントを復活させた。

これを機に、ブリテン・ファーストや複数の極右リーダーたちが「X」で発信できるようになった。

このほか「X」では、極右活動家のトミー・ロビンソン(本名スティーヴン・ヤクスリー=レノン)元受刑者が週末の間、何千人ものフォロワーに対して扇動的なメッセージを投稿していた。ロビンソン元受刑者は現在、キプロス滞在中で、プールでのんびりと寝そべる姿が報道されている。支持者への扇動メッセージはすべて、キプロスから発信されたもよう。

ロビンソン元受刑者のXアカウントは凍結されていたが、マスク氏が昨年11月に復活させている。

(英語記事 Musk shares faked far-right 'detainment camp' for rioters post / Musk hits back after PM criticises UK 'civil war' post

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c23l805lzneo


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