一方で、日本の水産物の消費量は、一人当たり年間で54.1kg(人口100万人以上の国で、2009年 世界第3位。2008年以前は1位)ですが、年々減少を続けており、水揚げ数量に関しては、1972年~1988年の17年間も世界第一であった面影はなく、ピーク時に1282万トンあったものが、2012年では484万トンと500万トンを切ってしまい低迷が続いています(グラフ参照)。グラフで比較するとその傾向は歴然で、誰が見ても大きな問題があることに気づくはずです。しかも、水揚げ数量だけでなく、水揚げ金額も減少を続けていますので、漁業者に取っては大変厳しく、致命的な状況と言えるでしょう。
選別しきれないほどの混獲は非現実的
日本のTAC対応魚種は、1996年に批准した国連海洋法に基づき制度を導入しましたが、2013年時点で、約350種に及ぶ漁業対象魚種に対し、僅か7魚種(サバ類、アジ、イワシ、サンマ、スケトウダラ、スルメイカ、ズワイガニ)しか設定がありません。そもそもTACが実際の漁獲量よりかなり大きくなってしまっていることは、このコラムでも指摘してきました。しかも期中に増えるという運用方法にも大きな問題があります(『「魚がいても獲らない」漁業先進国・ノルウェー』参照)。
今回ご説明するのは、TAC対応魚種の少なさです。水産白書によると、「緯度が高い北欧と異なり魚種が多いためにTAC設定魚種を増やすことは難しい」というのがその理由の一つのようです。しかし、南北は別にして、日本とほぼ同じ緯度(南緯40度前後)のニュージーランドでは98種類もTACが設定されています。米国は実に漁獲対象の全魚種(528種)にTACを設定する方針です。ノルウェーでは24種にTACが適用されています。
各国の輸入業者が、買付する国の魚種のTACの増減を見て、その年の市況を予想しながら買付を行うというのは業界では常識です。日本のスーパーで売られている輸入品のサバ、アジ、シシャモ、ギンダラ、マダラ、カラスガレイ、アカウオ、ズワイガニ、甘えび、タラコ、数の子等々といった天然の輸入水産物は、厳格なTACで管理されたものが輸入されています。