2024年10月6日(日)

WEDGE REPORT

2024年8月15日

なぜ、南北で状況は異なったのか

 終戦直後、朝鮮半島に残された日本人の運命が38度線という見えない境界線によって隔てられたことがわかっただろう。だが、境界線の南北で何が異なり、運命に影響を与えたのだろうか。

 一つは、統治機関、特に軍隊の存在だ。南朝鮮地域では、数日間の混乱は見られたが、日本軍が治安を維持したため、日本人の虐殺など悲惨な報復はほとんど起こらなかった。また、米軍進駐後は、米軍政庁が軍政を敷き、日本人の早急な帰国を命じて、それを実現した。

 一方の北朝鮮地域では、ソ連軍に武装解除された日本軍がシベリアに送られたため、民間人は軍隊による庇護を受けることができなかった。

 もう一つは、共産主義者による支配だ。南朝鮮地域では、左右が集まった朝鮮建国準備委員会を共産主義者が乗っ取り、一時は朝鮮人民共和国の建国を宣言したが、米軍はこれを認めず、共産党を非合法化した。

 一方の北朝鮮地域では、ソ連と朝鮮人の人民委員会が支配権を持ったので、日本人への虐待が階級闘争として正当化され、被害を大きくした。

 しかし、筆者は、朝鮮半島のみならず、外地での日本人の惨状に目を向けるとき、なぜそこに日本人が存在していたのかという点を深く自省しなければならないと考える。現在の価値観で過去を裁くことは愚かだが、他国を侵略した国家と国民が恨みを買うという単純な事実は、現在のロシアを見ても明らかだろう。

 最後に、日本人の韓国と北朝鮮に対する感情が大きく異なるのは、本稿で記した終戦直後の日本人に対する取り扱いが大きく影響しているのではないかと指摘したい。

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