ウォルズ氏は、ミネソタと境界を接するネブラスカ州の人口わずか300人の小さな町の農家に生まれ育ち、地元の中学、高校を経て陸軍国家警備隊に入隊、その後は、ミネソタ州に移り、高校教師兼フットボール・コーチなどを務めたのち、州知事就任前の2007年から18年まで連続6期連邦下院議員としても活躍した。
今回、こうした経歴の中で中西部の有権者の間でとくに声望高いのが、「農家育ち」「24年の軍歴」「高校教師」そして「フットボール・コーチ」であり、これらはいずれも「スモール・タウン・アメリカ」の代名詞にほかならない。
着実に見える支持の動き
実際に、去る8月6日、ウォルツ氏が副大統領候補として正式に選挙活動を開始して以来、各地の遊説先会場では、多くの熱心な支持者たちが同氏に敬意を表し「COACH!」「SCHOOL TEACHER」などと大書きした歓迎プラカードを掲げるシーンがたびたびTVニュースで放映されている。
ハリス氏の副大統領候補については、直前まで、マーク・ケリー上院議員(アリゾナ州選出)、ジョシュ・シャピロ・ペンシルベニア州知事、アンディ・ビシア・ケンタッキー州知事らが最有力視されてきた。しかし、ハリス氏個人および選挙参謀は最終的に、ウォルズ氏に白羽の矢を当てた。
その理由と背景について、歴代米大統領選挙問題に詳しいバーバラ・ペリー・バージニア大学政治学部教授はTVインタビューで次のように解説している:
「民主党は過去の大統領選で総得票数で共和党候補を上回っても、結果的に敗退したケースが少なくなかった。最近では、2000年そして16年大統領選挙でそれぞれG.W.ブッシュ、ドナルド・トランプ両共和党候補にホワイトハウスを明け渡した例がある。
今回、ハリス氏は全米最大州カリフォルニアという民主党地盤の州出身の大統領候補であり、他州でも得票数で有利なところが多いが、勝敗は南部、中西部接戦州の選挙人獲得数次第で決まる。この点、とくにウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア3州でアピール力のある人物を副大統領候補に当てる必要があった。
そこで、ハリス氏は計算ずくでウォルズ氏を選んだ。彼はその経歴が示す通り、中西部の平均的白人家庭の象徴的存在であり、とくに労働者階層の中での信頼が厚い」
全米最大の労組「アメリカ労働総同盟・産業別組合会議」(AFL-CIO)のアンジェロ・フェリト・ペンシルベニア支部長も、ウォルズ氏の中西部における訴求力について、次のように評している:
「彼は、ブルー・カラーの労働者が一緒にビールを飲み、釣りに出かけたりしたくなるような、きさくな人柄だ。ミネソタ州知事時代には、建設労働者の有給休暇制度、就労現場の安全徹底、公立学校教師の待遇改善などで目覚ましい成果を挙げた……政治家にしては珍しく株を保有しておらず、知事の報酬引き上げも固辞するなど、質素な暮らしぶりも好評を博している……まさにミドル・アメリカの代表的人物だ」