バンスへの風当たり
対照的なのが、バンス氏の不人気だ。
8月16日、ワシントン・ポスト紙がABCテレビと合同で実施した調査結果によると、バンス候補を「支持しない」と回答した人は42%だったのに対し、「支持する」はわずか30%にとどまっていることが分かった。
男女別のいずれの調査においても、不支持率が10%前後も上回っている。これまでの過激なタカ派的言動や女性蔑視発言に有権者の多くが幻滅しているとの指摘が相次いでいる。
こうしたことから、共和党議員の間でも、11月に向けたトランプ氏の選挙戦にとって「プラスになるどころか、足かせになっている」として、バンス氏を選んだトランプ氏にまで批判が向かいかけている。
従来、米大統領選において、副大統領候補に対する期待度は決して高くなかった。「勝敗を決めるのは所詮、大統領候補の資質そのものであり、歴代大統領候補は副大統領候補を選ぶ際、『選挙戦にマイナスにならない無難な人物』を重視してきた」との評価が定着してきた。
実際、トランプ氏も今回、副大統領候補の人選に関する事前のインタビューで「誰にするかは大した問題ではない。大統領候補がすべてだ」と答えたことがあった。ところが、実際はバンス氏を選んだとたん、急に世間の風当たりが強くなり、トランプ氏も当惑の色を隠せないでいる。
またそのせいか、トランプ氏が先月16日、全国党大会で共和党候補に正式指名されて以来、バンス氏と同じ遊説先で揃って演壇に立つ回数は今月に入り極端に少なってきており、もっぱら、地方遊説より単独の記者会見を通じ、得意のマイペースの毒舌に時間を割くことが増えつつある。民主党のハリス候補が遊説でウォルズ氏と行動を共にする機会が目立つのと好対照だ。
副大統領候補が勝敗を分ける可能性
そのバンス候補はこれまで、ウォルズ氏が副大統領候補同士のTV討論会開催を呼びかけてきたのに対し、沈黙してきたが、ようやく15日になって申し出受諾を表明、結局二人は10月1日、CBSテレビ司会で激論を戦わせることになった。
バンス氏としては、この討論会でなんとかこれまでの不評と劣勢を挽回したいところだが、ウォルズ氏は永年の連邦議会議員としてのキャリア、そして現職知事としての弁舌にもたけているだけに、楽観は許されない。
例年の米大統領選では、副大統領候補の注目度は決して高くはなかった。しかし今回はとくに、接戦州における得票数の数パーセントの差が勝敗を決するといわれている。
それだけに、ウォルズ民主党副大統領候補、バンス共和党副大統領候補補のいずれが、これらの州でどれだけ票の上積みに貢献できるか、あるいはそのマイナス要素になるのかが重大な意味を持ってくる可能性がある。