増えるサステナビリティ・リンク・ローン
環境省によると、環境対応意識が強まってきた2019年から、CO2排出量などの環境目標を取引先企業が達成した場合には融資金利を安くするインセンティブのついたサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)が始まり、7月26日現在で約1400本のSLLが組成されている。しかし、一定期間内に達成できなかった場合は金利は元に戻る仕組みで、環境団体に一定額を寄付しなければならなくなるディスインセンティブも付いている。
三井住友銀行によると、融資する金融機関側も、こうしたローンを推奨することで、「スコープ3」に相当する取引先企業のCO2排出量の削減につながるため、積極的に推奨しているという。企業にとってはSLLを受けていることを開示すれば、環境対策を進めているアピールにもつながる。
企業と契約を進める上で難しいのが「経営陣の納得を得ること。『そういう対策をして売上増につながりますか』という質問をする役員がいることもある。会社の上層部の理解を得て進めていかないと、小手先の対策で終わってしまい、会社全体のサステナビリティにつながらない」と指摘する。
プライム上場企業の半数獲得目指す
同社は21年度決算では年間売上2億6000万円、契約者数81社だったが、その後は契約者数が大幅に伸びた結果、23年度決算では売上9億5000万円、契約者数315社に増加した。今年11月の24年度決算では売上14億円と見ているが、5年後の28年度までの中期経営計画では、年間30%の売上増と毎年100社の新規契約を見込んでいる。今後の目標について、榎本氏は「5年後にはプライム上場企業の約半数の800社の獲得と、売上は40億円を目指す」と強気の目標を掲げている。
しかし、NTTデータなどテック系、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどメガバンク系やデロイトトーマツなど会計・シンクタンク系の企業の新規参入も増えてきており、今後はこれらの企業との競争が激化するのは必至とみられ、いかに独自性を出せるかが問われてくる。
ランク評価が上がる
21年度からCDPへの回答支援を受けているANAホールディングス・サステナビリティ推進部の上村等マネージャーは「ブルードットグリーンの支援により、それまでのCDPの評価が『B』ランクだったものが2段階上がって、22年度から連続して『A』ランクになった。世界のエアライングループで23年度に『A』を獲れたのはANAホールディングスだけ。今後は2030年のCO2の排出削減目標に向けて努力し、『A』を維持できるように努力していきたい」と述べ、支援を評価している。
新たな負担
企業側にとっては、環境対策の費用は売上増加には直接的な効果はない。しかし、事業が拡大すればCO2排出ガスの量は自動的に増えてくる。排出ガスの削減が世界的な風潮の中で求められている以上は、費用は掛かっても対策を取らざるを得ない苦しい選択を迫られている。
ファイナンスや投資活動についても環境を意識した経営判断が求められてきている。さらに最近では、企業の事務所や工場のある地域の問題や社会課題を解決するための貢献も必要視されてきており、自社の事業活動だけでなく、より広い視点での経済活動が評価される時代になってきていると言えそうだ。