南米ヴェネズエラで7月の大統領選挙の結果をめぐる混乱が続く中、野党候補のエドムンド・ゴンザレス氏(75)が8日、亡命先のスペインに到着し、自国の民主主義のために「戦い続ける」と誓った。ヴェネズエラ政府はゴンザレス氏について、公文書偽造や共謀などの疑いで逮捕状を出していた。
ゴンザレス氏はヴェネズエラの首都カラカスにあるスペイン大使館に数週間にわたり避難した後、7日にヴェネズエラを出国。スペインの首都マドリードのトレホン・デ・アルドス空軍基地に8日午後4時ごろ、妻とともに到着した。
7月の大統領選挙では、現職のニコラス・マドゥロ大統領が3選を果たしたと、選管当局が発表した。しかし、ゴンザレス氏や国際社会からは開票結果に異議を唱える声が上がり、市民が結果に抗議するなど混乱が続いていた。
ヴェネズエラ政府はゴンザレス氏の出国に先立ち、共謀や文書偽造などの「重犯罪」を犯したとして、逮捕状を出していた。
ゴンザレス氏の広報チームが公開した音声メッセージの中で、同氏は連帯を表明した支持者に感謝し、スペインに到着したと発表。「間もなく、ヴェネズエラの自由と民主主義の回復を達成するための戦いを続けられると確信している」と述べた。
「出国は許されないという圧力や強制、脅迫が相次ぐ状況で、カラカスを出発した」とも、ゴンザレス氏は話した。
これに先立ち、ヴェネズエラの野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏はソーシャルメディアで選挙後の「残忍な弾圧の波」に言及し、ゴンザレス氏が「命の危険にさらされた」ため出国を決断したと説明した。
マチャド氏はマドゥロ大統領の対立候補として出馬が予想されていた。しかし、マドゥロ氏寄りのヴェネズエラ最高裁は1月、マチャド氏の公職就任を禁じたマドゥロ政権の決定を支持する判決を言い渡し、マチャド氏は事実上出馬を阻止された。
野党側はゴンザレス氏が大差で勝利した証拠があると主張し、詳細な集計結果をインターネット上に掲載している。それによると、ゴンザレス氏がマドゥロ氏に圧勝したことがうかがえる。
国際社会の反応
アメリカ、欧州連合(EU)など大半の外国政府は、ヴェネズエラ政府が投票結果を証明する詳細な投票データを公表しない限り、マドゥロ氏を当選者として受け入れないとしている。
アントニー・ブリンケン米国務長官は8日の声明で、ゴンザレス氏のヴェネズエラ出国は、「ニコラス・マドゥロ氏が選挙以降、(エドムンド)ゴンザレス・ウルティア氏やほかの野党指導者たちを含むヴェネズエラ国民に放った、反民主主義的措置が直接もたらした結果だ」と述べた。
「マドゥロ氏とヴェネズエラの選挙当局が、選挙結果と民意をあっさり一蹴するなど、あり得ない。ヴェネズエラの自由と民主主義回復のため戦い続けるという、ゴンザレス・ウルティア氏の呼びかけを私たちは支持する」
欧州委員会のジョセップ・ボレル副委員長は8日、「今日はヴェネズエラの民主主義にとって悲しい日だ」、「民主主義において、いかなる政治指導者も他国への亡命を余儀なくされるべきではない」と述べた。
そして、ヴェネズエラは野党指導者に対する弾圧をやめ、すべての政治犯を解放する必要があるとした。
スペインのペドロ・サンチェス首相は7日の社会党の会合で、ゴンザレス氏は「スペインが見捨てることのない英雄」だとした。
スペインのホセ・マヌエル・アルバレス外相は、同国政府はすべてのヴェネズエラ人の「政治的権利にコミットしている」とし、ゴンザレス氏の亡命を認めるだろうと述べていた。
ゴンザレス氏の出国前には、ヴェネズエラの治安部隊が在カラカス・アルゼンチン大使館を包囲する事態となった。この大使館には、野党関係者6人が身を寄せている。
ヴェネズエラ外務省は、アルゼンチン大使館を治安部隊が包囲した理由について、大使館内でテロ行為が企てられていると主張した。
(英語記事 Venezuela's González vows to 'continue to fight' for democracy)