米卸業者から出た〝正論〟
2023年から24年産に至る米の動きに関して、ある米卸が、こうコメントした(8月31日 信濃毎日新聞)。
① 全国的品薄は、新米出荷で改善していく。
② しかし、価格は供給不足で高止まりしている。新米は、「当初は高め」だが、北東北、北海道が11月に出揃えば来年以降下がる (=年末あたりがピーク)ではないか。
③生産コストは上昇しているので、価格の適正化について理解を求めたい。
④今後とも生産調整を続けて行くのかどうか国民的議論があってよい。
これはまことに正鵠を射た指摘であり、こちらが常識、これまでが非常識だった。
このところの流通の混乱を受けて、コメ政策に関するメディアの見方も少しずつ変わってきたように思える。日本経済新聞は、9月2日付の経済面で、「いまこそ政策転換のとき」として、コメ生産抑制政策への批判に舵を切っている。
「農政の憲法」とも言われる食料・農業・農村基本法の改正にあたっても、食料安全保障を食料、農業政策の最重要課題に掲げているのだから、本来は、思い切って生産調整の廃止をはじめとする本質的議論があって然るべきだったのだ。
今後のコメ政策のあり方
望ましいコメ政策のあり方に関し、筆者はWedge ONLINEで以下の主張をしてきた。
① 価格は競争に委ね、所得は直接支払いで補うことで、経営持続を図る。
② 需給調整は市場の価格シグナルで誘導する。
③ 1年1作であるコメ作の経営計画が立つように先物市場を整備しリスクヘッジを可能にする。
④ 食料安全保障の観点から、コメの生産調整は取り止め、①②③によって国際市場での競争力を持たせ、輸出を増やす。今回の「コメ不足」のような緊急時には輸出を国内供給に振り替える。
これによって、生産者には経営の持続が可能となり、消費者には、高米価と生産調整に伴う財政負担(=税金の支払い)という〝二重負担〟から免れられ、いざという時の基礎食料の供給も保証される。そして、直接支払いへの政策転換に必要な財源は、現行予算の組み替えなどで捻出は可能である。
米の品薄、高価格、食料の安全保障に関する危機感、世論の<米の生産抑制政策は転換を>などの声を踏まえて、国民的議論をなすべきときが来たのでは ないだろうか。