2024年11月23日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年9月13日

 成長のための規制緩和を強調しているのは、河野氏と小泉氏で、両氏とも、ライドシェアの本当の解禁(現状の日本のように、タクシー会社がライドシェアをするのではなくて、個人がスマホのアプリで隙間時間にタクシー類似のサービスをする制度)を唱えている。ただし、ライドシェアの解禁だけで、経済が目に見えるほど成長するのは無理だろう。

 多くの候補者が、安全性を確保しての原発の再稼働に賛成している。エネルギーコストの高騰を考えれば、これも経済政策そのものだろう。

労働解雇規制の緩和

 労働解雇規制の緩和が話題になったのは、特に小泉氏の言いぶりがはっきりしていたからだろう。日本人は、世界でもっとも自分の会社が嫌いというアンケート結果は最近知られるようになった。日本で会社に「エンゲージしている」と答えた人の割合は先進国中で最も低い(岡本純子「日本人は世界一、自分の会社を嫌っている」東洋経済オンライン2016月2月9日、参照)。

 エンゲージという言葉の翻訳は難しいが、帰属していると訳せるから、それが低いのは「嫌っている」と解釈できるだろう。筆者は、この背景には、終身雇用制度と年功序列賃金があると思う。

 職を変わると不利になる制度があって、いやいや会社にしがみつくのは、労働者にとっても企業にとっても不幸だ。多くの経済学者は、短期間で職を移動すると不利になる退職金税制の見直しや、解雇の金銭的補償などを提案しているが、小泉氏は、あまり前提条件なしの解雇規制の緩和を提案しているようだ。

 いやいや働いている人が多い会社の生産性が高まるはずはないから、解雇規制の緩和は必ず生産性を上げるだろう。しかし、生活の理由があってしがみついているのだから、解雇自由になってはたまらないと考える人が多いのは当然だ。高市氏も、小泉氏の雇規制緩和に「反対だ」と明言している。

 経済協力開発機構(OECD)の指標(Employment Protection Legislation Indicator)によれば、日本の解雇規制は、アメリカに比べれば厳しいが、欧州に比べれば厳しくないようだ。現実に、日本の会社も、いざとなればいくらでも人減らしをしている。

 しかし、解雇の難しい大企業や官公庁で働いている人は少数で、むしろ多数の人はしがみ付く値打ちのない企業で働いていると思っているのかもしれない。また、かつてはしがみ付きたいと思っていた職場でも、パワハラや多すぎる残業で別にどうでも良いと思い出している人が実は多いのかもしれない。霞が関や兵庫県庁はそんな職場なのかもしれない。

 金融課税強化には、石破氏、林氏が条件付き賛成に思えるが、多くの候補が慎重ないしは否定的だ。岸田文雄政権が言い出して、すぐさま引っ込めてしまった経緯を知っている人々は、当然に慎重なのだろう。


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