2024年11月23日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年9月13日

 いずれの候補者の主張も似ているような気がする。社会保障制度が、若者から高齢者への所得再分配となっている状況を変え、年齢によらず高齢の高所得者には負担を求めるということのようだ。

 これ自体は、すでに少しずつ行われてきたことでもある。最近の子育て支援の拡充も、社会保障給付を高齢者にだけでなく、働く世代にも行うという動きである。

年末調整廃止論

 筆者が興味深く思ったのは、河野デジタル相の、年末調整廃止論だ。「最終的に年末調整をやめる。すべての確定申告が自動で入力され、ボタンを押せば申告が終わる」

 行政と民間データの連携により、ピンポイントのプッシュ型の給付金支援などが可能になると説明した。

 徴税費用とは税務署の費用だけではなく、本来、税金を取られる方の費用も含んでいる。

 年末調整を会社がすれば税務署の手間が省けるが、会社の手間はかかっている。本当にデジタル化できれば、個人も会社も税務署も手間が省けるだろう。

候補者9人の意義

 9人の候補者の主張を理解し、論評するのは正直なところ大変だが、9人立候補したからこそ、解雇規制の緩和、年末調整の廃止のような尖ったアイデアが現実的な政策論として登場してきたのだろう。解雇規制の緩和は、解雇の金銭的補償、退職金税制の改善などと一緒であれば、実現する可能性がある。

 尖ったアイデアを丸くするのではなくて議論によって洗練して欲しい。年末調整の廃止は、現在の政府のデジタル能力では不可能と思うが、そこが解決されれば、各自が確定申告することも可能だろう。

 国民が納税者としての自覚を高めることが健全な政治のために必要だ。「代表なくして課税なし」というスローガンからアメリカ独立革命と民主主義が始まったのだ。

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