アベノミクス、キシダノミクスの評価
半数以上の候補がアベノミクス、キシダノミクスの評価を鮮明にしていないのが不思議である。この中で、高市氏と加藤氏はアベノミクス、小泉氏がキシダノミクスの継承とはっきりと打ち出している。
アベノミクスは大胆な金融緩和で、キシダノミクスはやや大胆な金融緩和だろう。岸田首相は、効果に疑念のある燃料補助金に10兆円費やしているのだから、別に財政規律重視派とは思えない(本欄「ガソリン補助金は問題大ありの政策である経済的理由」2023年9月12日、参照)。
大胆な金融緩和によって雇用が改善、名目国内総生産(GDP)が増加、税収も増加した。一般会計税収は、アベノミクスが始まる前の2012年度の43.9兆円から23年度の72.1兆円と11年間で28.2兆円も増加した。うち、消費税収は10.3兆円から23.1兆円、差分は12.8兆円である。税率を引き上げた消費税を除いても15.4兆円(28.2-12.8)も税収が増加した。
アベノミクス以前の11年間、01年度から12年度までは、税収が4.0兆円も減少していた。茂木氏の「増税ゼロ政策」が可能になるのは、アベノミクスを前提としたものだ。小泉氏、高市氏、加藤氏は、その前提を意識しての「継承」論だと思う。特に、高市氏は、金融緩和で自然と税収が増えていく状況を作ることが大事と明言している。しかし、茂木氏がどう考えているのかは分からない。
他の候補の評価も分からないが、経済政策にあまり関心のなさそうな石破氏は、異次元金融緩和で銀行の体力が低下したと問題にしている。体力低下が事実かどうかも分からないし、15.4兆円も税収が上がったのだから、問題にするに値しないのではないか。
また、アベノミクス、キシダノミクスの下で人手不足が続いていることも重要だ。人手不足だからこそ、賃金も上がり、タクシー運転手も人手不足になってライドシェアが求められ、解雇規制の緩和も争点に上げることができたのだろう。
社会保障改革
社会保障費は国債費を除いた一般会計歳出の44%にも及ぶのだから、これは経済政策、少なくとも財政政策そのものである。
小林氏は、給付か負担かではない「第三の道」を標榜し、将来に安心と活力をもたらす社会保障制度改革と若者の手取り増大。石破氏は、医療・年金・子育て・介護など全般の見直しを通じた生産性と所得の向上。林氏は、不安解消、「ウェルビーイング向上社会」の実現。茂木氏は、社会保障分野にデジタルを完全導入、高所得者に相応の負担をお願いする一方、現役の低所得者層、子育て世帯の負担は軽減、「年齢区分から負担能力」を重視。加藤氏は、子どもの給食費と医療費に加え、出産費の負担をなくす「3つのゼロ」を掲げる。上川氏は、「誰一人、取り残さない社会」を掲げ、子育て世代の負担軽減を訴えた。