昨年より1俵1万円高くなった新米
コメの需給状況がどうなっているのかを知る方法として一番確実なことは、仲介業者が日々売り買いしているスポット価格を見ることである。スポット価格は、人間で例えるなら体温のようなもので、価格が上がることで需給状況がタイトになっていることがわかる。
グラフはコメ卸業界の全国米穀販売事業共済協同組合(略称:全米販)が作成した関東コシヒカリの年産ごとのスポット価格を示したものである。これで明らかなように23年産は出回り当初から右肩上がりで値上がりしている。その流れを引きずって24年産米も高値でスタートした。
全米販の子会社クリスタルライスは、日々スポット市場で売り買いするほか、定期的にFAX取引会を開催している。直近の取引会(8月29日実施)では、収穫前の東北各産地の新米を中心に35産地銘柄3万1000俵余りの売り物があり、青森まっしぐらや宮城や岩手のひとめぼれ、秋田あきたこまちなど提示された。その価格は9月、10月の渡し条件で2万6000円から2万8000円で、昨年同期に比べるとおよそ1俵当たり1万円の高値になっている。
盆前に刈取りが始まった関東早期米の庭先価格は集荷合戦が過熱化して2万4000円でスタートしたが、その時は9月になれば価格が落ち着くという見方もあった。しかし実際にはさらにヒートアップして東北産米はさらに高値になった。
以前からコメの端境期に当たる6月から8月にかけて需給がひっ迫するという見方がコメ業界では強かった。コメ小売業界の全国団体の日本米穀商連合会が今年5月にアンケート調査を実施したところ、仕入れ数量が少なくなっていると答えた小売店が66.4%、仕入れが出来ないと答えた小売店が18.6%もいた。
事態を重く見た日米連は農水省に出向き、こうした逼迫状況を改善してほしいと陳情したものの農水省からは「スーパーの店頭には精米が並んでおり、ひっ迫している状況ではない」という回答で何らの対策も示されなかった。そのあとひっ迫していない根拠として挙げていたスーパーのコメ売り場からもコメが消えたが、それでも政府備蓄米を売却しなかったことから市場のコメ価格が急騰した。