コメの需要が国内で賄えない日も近い
現状のコメ政策が進められると将来コメ業界がどうなるのか? その予測を示した「米穀流通2040ビジョン」と題する冊子を全米販が6月12日に公表した。
何もせずこのままの状況が続くと、2040年にはコメの生産者は20年に比べ65%も減り30万人程度になり、生産できる数量はわずか363万トンになるという衝撃的な数字を示した。生産者が減少するスピードと減少率は官民の研究機関が予測を出しており、農研機構も25年には一戸平均で40ヘクタールの水田を耕作しないと現在の生産量は維持できないという見通しを作成するなど生産基盤の弱体化は早いスピードで進んでいることが示されている。
全米販の2040ビジョンでは、国内のコメ需要を賄えなくなる年は33年と予測しており、遠い将来のことではない。にもかかわらず農水省はさらに強力なコメ減らし政策を目的とする「畑地化促進事業」を推進している。
これはこれまでの転作より強力で、畑地にすれば転作助成金を上乗せするというもの。このコメ減らし政策を推進する背景になっているのが、海外から大豆や小麦、トウモロコシなどの穀物が従来通り輸入され続けるという見通しの上に組み立てられている。一方で食料の安全保障を声高に叫びながら、最も安定的に国内で生産できるコメの生産を減らすというのは、考え方が理解できないばかりか国民生活の安全を脅かす政策判断だと言える。
こうした歪んだコメ政策を止め、真に産業としてコメを復活させるためには、コメの価格は市場に任せ、生産者がコメを再生産できるように欧州連合(EU)並みに国が直接補償する以外にない。コメの市場は産業インフラになるように現物プラス先渡し市場と価格変動のリスクをカバーできる先物精算市場を整備する必要がある。
これによってコメは品位や食味によって価格が決められ、主食用であれ加工用であれ必要とされる需要に流れていく。こうした産業としてあるべき姿に戻すことがコメ業界にとって極めて重要だ。現在のように用途を法律で規制していてはいつまでたっても需要が増えないばかりか輸出も増えない。