2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年9月27日

 この混乱から唯一、受益者となりそうなのは、2027年の3度目の大統領選に向けて準備を進めているルペンだ。マクロンの新政権の選出におけるキングメーカーの役割を与えられ、今やその存続の保証人として、彼女は切望する資格、つまり尊敬の念を手に入れた。彼女は、反ユダヤ主義者を追放し、生活費などの日常的な問題を受け入れることで、党の毒気を抜こうとしてきた。

 彼女の目標は、国民連合を権力の座から遠ざけるために主流政党が築いたファイアウォールを打ち壊すことだった。今や、マクロンは、政治的基盤を入れ替えようという衝動的な決定によって、ファイアウォールの亀裂だけでなく、大きな突破口を許してしまった。

 ルペンがその影響力をどのように展開するか、すなわち彼女の党の右派ポピュリストのアジェンダを強く主張するか、または中道派に歩み寄るかは、今後数カ月で明らかになるだろう。驚くべきことは、何年にもわたって周辺に追いやられていた極右が、今や政府の政策と国家の未来について決定的な支配力を持ったことだ。

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連立政権を拒むフランス政治

 この論説は、マクロンが極右の国民連合の支援に依存してバルニエ首相を任命したことを、ルペンに首相人事や政府の政策についての拒否権を持たせ、将来の政権獲得への道を開いたものだとして強く批判するトーンである。しかし、議会解散という賭けが裏目に出たことは今更嘆いても意味がなく、またマクロンが国民連合の協力を得た原因は、左派新人民戦線が選挙結果を自らの勝利と位置付けた硬直的な対応にあり、それ以外の選択が無くなったためだ。その結果、国民連合との連携以外に道がなくなり、ルペンのキングメーカーとしての地位が確立したと言える。

 選挙の結果、国民議会で、過半数を有する会派はなく、現状は総数577のうち、最大会派の新人民戦線(左派4党連合)は、193議席に過ぎず、二番手がマクロンの与党の中道連合の166議席、三番手が極右の国民連合に共和党の右派が加わった142議席であり、いずれも過半数の289には程遠く、三すくみの状態である。本来、3つの勢力のうちいずれか2つが連合すれば連立政権が成立するはずであるが、フランス第5共和制では交渉による連立政権形成の経験や伝統がなく、妥協を拒む姿勢が事態の混迷を招いた背景にある。

 憲法上首相の任命権は大統領にあり、マクロン自ら各党と受け入れ可能な候補者についての協議を行い、社会党系労働組合の委員長や諮問機関の「経済環境社会評議会」議長等の非政治家や、オランド社会党政権で首相を務めたカズヌーブ、共和党政権で閣僚を務めたベルトラン地方圏議長等を有力候補として検討された。しかし、いずれも不信任決議を回避できる目途が立たず、結局国民連合が受け入れ可能としたバルニエ元外相の任命に至った。


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