欧州議会選挙の結果について、2024年6月11日付Frankfurter Allgemeine Zeitungの解説記事は、民族保守派、右派ポピュリストが議席を増やしたが、勝者はドイツのキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)を含む欧州人民党(EPP)であり、有権者は冷戦後に西側の政策を刻印してきた左派リベラルの精神に別れを告げた、と論じている。
欧州議会での議席配分は、民族保守派と右派ポピュリストは議席を増やしたが、キリスト教民主、社会民主、リベラルのグループは多数を維持した。歴史的に欧州統合の支柱である欧州人民党(EPP)グループは議席を増やし、EPPはドイツのキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)同様に勝者である。
緑の党とリベラルの議席減は特にドイツ、フランスにおいて顕著であった。こうした結果は、急激な「右振れ」ではなく、長年の欧州連合(EU)全体の趨勢の継続である。
すなわち、有権者は冷戦終了後、西側の政策を刻印してきた左派リベラルの時代精神に別れを告げているのであり、グローバル化、移民等への幻滅がその中核にある。
イタリアでは民族保守派が政権に就き、欧州議会選挙でも勝利したが、EPPの成功は、右派ポピュリストだけが上述の趨勢の結末ではないことを示した。中道の有権者を獲得するために、プーチンに服従し、気候変動を否定し、移民を敵視し、EUを拒否する必要はないのである。
また、仮に一旦、右派が伸長しても、それが「一方通行」でないことは、ポーランドで今回、再び「市民プラットフォーム」が「法と正義」を破ったことからも分かる。今回の欧州議会選挙にメッセージが隠されているとすれば、おそらくそれは、「有権者はEUに対してより懐疑的になっているが、それでも多数は『協力の(欧州)大陸』を望んでいる」というものであり、それはグローバルな混乱の中で決して悪いことではない。
欧州議会選挙がフランスにおいて最大の帰結をもたらしたのは、選挙結果そのものよりはマクロンの衝動的なスタイルによる。マクロンは思い切った賭けに出たが、国民の態度が数週間で根本的に変わるかは定かでなく、仏選挙法の特殊性もマクロンが当てにする「共和国派」の勝利を保証するものではない。