もしバルデラが首相に就任することになれば、マクロンはこれまで説教してきた「われわれのヨーロッパ」の解体に自ら手を貸したことになる。最後の任期のリベラルな大統領と上昇機運の右派ポピュリストとのコアビタシオンはもめ事が多いものとなり、独仏関係からウクライナ問題まで、多くの分野におけるフランスの役割を弱めるであろう。
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選挙結果を冷静に分析すると…
欧州議会選挙の結果についての報道では、右翼あるいは右派が「伸長」「台頭」「躍進」したというものが多い。右翼/右派は「極右ポピュリスト」「民族保守」「強硬保守」等、さまざまな呼び方がされているが、要は、欧州議会内のグループのうち、①メローニの「イタリアの同胞」やポーランドの「法と正義」等で構成される「欧州保守改革(ECR)」、②フランスの国民連合(RN)やオーストリアの自由党等から成る「アイデンティティと民主主義(ID)」、および③上記のいずれにも属さない「ドイツのための選択肢(AfD)」等である。
最新の集計ではECR76議席(7増)、ID58議席(9増)、AfD15議席(6増)なので、その合計は149議席(22増)となる。一方、他の主なグループの結果は、EPP190議席(14増)、社会民主同盟(SD)136議席(3減)、「刷新」80議席(22減)、緑の党52議席(19減)、左派39議席(2増)である。
このように具体的な議席数を見ると、右派は「伸長」したとは言えるが、今回の選挙の総括としては、上記記事の通り、右派の伸長だけではなく、EPPの健闘、リベラルおよび緑の大敗、そして、全体としてEU支持勢力が多数を維持したことを併せて伝えないとバランスを失する。
右派の「躍進」の見出しが踊ったのは、欧州議会でそれぞれ96議席、81議席を有するドイツ、フランスにおいてAfD、RNが文字通り躍進したことの衝撃に流された面があるにしても、欧州議会選挙は実際には国別に行われ、国毎の結果には当然のことながら相当のバラツキがある(例えば、北欧やスペイン、ポルトガルでは右派以外の「主流」の政党が勝利を納めている)ので、各グループの「仕上がり」の議席数をもって欧州全体の趨勢を論じるのは無理がある。