2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月1日

 今回の選挙で社会民主、リベラル、緑の3グループが振るわなかったことについて、上掲解説記事は「(急激な)右振れではなく、長年のEU全体の趨勢の継続である」「有権者は冷戦終了後、西側の政策を刻印してきた左派リベラルの時代精神に別れを告げており、グローバル化、移民等への幻滅がその中核にある」と論じている。如何にも保守系のFAZらしい分析ではあるが、上述の通り、欧州議会選挙の結果を基に欧州(EU)全体の趨勢を論じるのは無理があることに加え、ここまで長期的、広範囲の見方はやや性急に過ぎるのではないかと思われる。

注目されるEUの政策変化

 これに対して、ウォールストリート・ジャーナル紙の論説は、緑の党が大敗したことについて、「ドイツの緑の党の凋落」とのタイトルで、3党連立への飽き、気候変動への関心の減退、安全保障と移民問題の優先順位の上昇を原因として挙げ、また、フィナンシャル・タイムズ紙社説も「欧州の緑の逆回転」とのタイトルで、 2019年選挙での緑の党の好成績はコロナ前、ウクライナ侵攻前のより平穏な環境下のものであり、今回、有権者は環境政策が家計や生活にもたらす負担を感じ取っていたと論じている。両者はFAZ解説と通ずるものもあるが、FAZよりは穏当である。

 今後のEUの政策については、環境政策、移民政策、貿易政策などの分野で何らかの調整が行われる可能性が高いというのが大方の見方である。

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