2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年2月4日

過去に辛酸を嘗めた北米進出

 一方、北米やヨーロッパへの進出も韓国映画界は考えている。しかし、韓国に限らず北米に外国映画が進出するのは簡単ではない。

 たとえば、北米でもっともヒットした日本映画は、1999年に公開された『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』である。アニメ『ポケモン』の1作目ということもあって、8600万ドルの大ヒットとなった。だが、翌年の新作はその半分、さらにその翌年は半分以下という成績となり、4作目以降は劇場公開されなくなった。アカデミー賞最優秀長編アニメ賞を受賞した宮﨑駿監督の『千と千尋の神隠し』も、北米では興行収入1006万ドルと目立ったヒットにはならなかった(日本では興行収入304億円)。日本のアニメですら北米の壁は厚いのである。

 韓国映画界も、北米への進出では苦い記憶がある。2007年に全米公開された『D-WARS ディー・ウォーズ』は、韓国のシム・ヒョンレ監督が現地のキャストとスタッフを使い、3200万ドルの製作費をかけた全編英語の怪獣特撮映画だった。しかし、結果は興行収入1100万ドルと惨敗。韓国では大ヒットしたものの、その作品内容には国内でも批判が相次いだ。

 こうした失敗を経ても、いや、だからこそ韓国映画は果敢に海外進出に挑んでいる。特に昨年はこの点で大きな成果を見せた。韓国を代表する3人の監督が世界進出を果たし、それらがすべて十分なの作品クオリティとなっていたからだ。

 1人目は冒頭で紹介したポン・ジュノである。彼の特徴は、ミステリーや怪獣などの題材を扱いながらも、その基底には社会問題を鋭くえぐるテーマがしっかり根付いていることである。『殺人の追憶』や『母なる証明』では謎の連続殺人事件をモチーフに韓国が抱える社会問題を描き出し、『グエムル -漢江の怪物-』では怪獣パニック映画でありながらも米軍と韓国の関係を描いた。

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 『グッド・バッド・ウィアード』や『悪魔を見た』のキム・ジウンは、昨年アーノルド・シュワルツェネッガーの主演復帰映画『ラストスタンド』を監督した。これはアカデミー賞作品賞を受賞した『クラッシュ』を製作・配給したカナダの映画会社ライオンズ・ゲートとの仕事だが、西部劇の要素を盛り込んだ独特のアクション映画となった。

 『JSA』や『オールド・ボーイ』のパク・チャヌクは、ミア・ワシコウスカ主演の『イノセント・ガーデン』を発表した。これは、ハリウッドメジャー・20世紀フォックスのセカンドレーベル・フォックサーチライトで製作・配給された作品だ。ヒッチコックを思わせるこのサイコサスペンスでは、パク・チャヌク独特の作風と実力がアメリカを舞台にしっかりと花開いていることが確認できる。

映画通の間では評価されるものの…… 

 こうした昨今の韓国映画の出来は、日本の映画通の間でも高く評価されている。残念なのは、それが一般にはなかなか広がらないことである。たしかに日本映画も、2000年代以降にテレビ局の参入や才能あるアニメ監督によって、娯楽映画としての質を高めた。年寄りとマニアしか観なかった90年代の日本映画を考えると、それは大きな前進だった。

 こうした日本の映画状況において、韓国に限らず外国映画が興味を持たれにくいのは、もしかしたら仕方がないことなのかもしれない。しかし、ひとつでも面白い韓国映画を観れば、その人は確実に興味を持つはずだ。我々と同じ顔をした東洋人たちが、ハリウッドのようなエンタテインメントを創っているのだから。そして同時に強く嫉妬するはずだ。

 いま、韓国映画を観逃すことは、確実にもったいないのである。

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