2024年10月28日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月24日

 10年近く前からイスラエル軍は、ヒズボラが南レバノンの村々に軍事拠点を設けていると警告し続けており、昨年10月、ハマスがイスラエルを紛争に巻き込むまではイスラエル軍が対ヒズボラ作戦の準備を進めて来た。イスラエル政府は、ガザではハマスを壊滅させると宣言しているが、レバノンでは(ヒズボラの国境越しの攻撃で避難している)約6万人の避難民を帰還させるという穏健な目標を設定している。

 イスラエルのガラント国防相は、ヒズボラに対する戦争は、ヒズボラに対して戦闘を止め、国境から兵力を撤退させるように段階的に進められると述べている。しかし、専門家は「イスラエルの戦略目標が明確ではない」と言っており、撤退まで18年かかった1982年のレバノン侵攻作戦のようにイスラエルがレバノンで泥沼にはまるかも知れない。

 専門家は、イスラエルが直面する問題は、どのようにして軍事的な勝利を長期的な外交的解決に落とし込むかである、と述べている。イスラエル軍のオリオン退役将軍は、物事が逆風になる前に出口戦略を見つけられるかに掛かっており、「我々は、(終盤でなく)まだ、映画の最中にいる」と述べている。

*   *   *

見えないレバノン国境安定化へのプラン

 イスラエルのレバノン侵攻が、遂に始まってしまった。しかも、初めから、ヒズボラの後見人である域内の大国イランを巻き込んでおり、この衝突が、中東全域、特に日本が原油輸入の90%以上を依存するペルシャ湾地域に悪影響を及ぼす可能性も否定できない。

 上記の記事は、1982年から2000年の長期間、イスラエルは南レバノンに最初はPLO(パレスチナ解放機構)、その後はヒズボラからの越境攻撃を防ぐために「安全保障地帯」(占領地)を設けたが、結局、撤退を余儀なくされた苦い経験があるのにもかかわらず、再度、イスラエルが陸上侵攻していることについての懸念を示している。これには同意できる。

 最大の問題は、イスラエルの戦略目標が見えないことである。レバノン正面について言えば、イスラエルはレバノン作戦の目標を避難民の帰還としており、現時点では優れたインテリジェンス、軍事力でヒズボラを圧倒している。しかし、長期的にヒズボラの越境攻撃を防ぐためには、再度、南レバノンの一部を占領せざるを得ないのではないか。


新着記事

»もっと見る