2024年6月16日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月17日

 ただし、南シナ海という海域はどのような警察力にとっても広大である。これが第四のポイントである。南シナ海の3分の2にも及ぶ広大な海域で起こる事象を監視し、違反者を取り締まるだけのことが中国の法執行機関にできるかどうかは疑わしい、と論じています。

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 ホームズは、軍事力を背景とした威圧的外交「棍棒外交」(Big Stick Diplomacy)に対して、中国が現在繰り広げているような、法執行力、警察力をちらつかせながら活動を常態化させ、自己に有利な主張を既成事実化しようとするやり方を「小さな棍棒外交」(small-stick diplomacy)と名付け、頻繁に用いています。今般の南シナ海における漁業規制が、ホームズの言う「小さな棍棒外交」であるのは疑いのないところです。

 それにしても、中国が何故このように、次から次へと強硬措置を打ち出してくるのか、内部の事情は知る由も無いので、推測するしかありません。

 おそらくは、中国政府部内で、強硬政策を主張し、実施する分子は「しっかりしている」、穏健政策を主張する分子は「軟弱である」と評価される、1930年代の日本のような風潮があるのでしょう。そして、何らかの内部の権力闘争もかかわって、お互いに強硬さを競い合うような状況があるものと推測されます。

 おそらくは、東シナ海上空への防空識別圏(ADIZ)設定を主張した分子は、「しっかりしている」「よくやった」と評価されている雰囲気があり、それに乗って、南シナ海の漁業規制を実施した分子は、同じ積極的な評価を受けようとしているということなのでしょう。また、それに反対する人々は沈黙を余儀なくされているという状況と想像されます。

 それは、満州事変後、長城線を越えて北支工作を次々と進めた日本の軍部と同じ精神構造であると言ってよいのでしょう。

 しかし、そこには中国なりの歯止めがかかっています。それが、ホームズの言う「小さな棍棒外交」であり、当面軍の出動を控え、治安、行政取締り権力の出動に留めていることです。

 これに対して、東シナ海においては、日本としては、先方が領土主張などを引っ込める可能性はまず無いのですから、根本的解決はあり得ないと判断した上で、当面、この中国側のルール・オブ・ザ・ゲームに乗って、海上保安力を強化するしかありません。

 日本は、太平洋戦争直前の米国のような「平和主義国家」ですから、当時のアメリカのように「最初の一発」は向こう側に射ってもらわねばなりません。ということは、真珠湾攻撃とまでは行かなくても、最初は相当な打撃を蒙ることは覚悟で臨まねばなりません。それを考えれば、中国側の船が故意にぶつかってくるケースも想定せざるを得ませんが、それでも、それで収まればそれで我慢するという、不愉快なゲームを繰り返すしかないのでしょう。

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